銭投げ
守城たまえはごく普通の銀行員である。毎日ATMの列をご案内し、毎日一円の誤差におびえる、齢26の銀行員である。今日も今日とて、二千円札のピン札をお求めのお客様に用意できないことをお詫びした後、行きつけのコンビニでコインチョコと蒲焼の駄菓子を買って家路についていた―――のだが。
ギュギュイッ!!ギュウキッギュイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。守城たまえの魂と、女神が対面している。
「守城たまえさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
守城たまえ(26)
レベル12
称号:転生者
保有スキル:銭投げ
HP:12
MP:28
「というわけで、いきなり草原に放り出す…すごい大自然だな、ここ。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が銀行員の前に現れた!
「きゃあ?!スライム?!武器も何もないよ?!た、たすけて!!!」
うろたえる、銀行員。
「あっ!保有スキル!試したら戦えるかも!銭投げ?!何投げるのよっ!!!」
うばほん!!!
銀行員の目の前に棒金と札束がわんさか出てきた!
「わあ!!!これ投げちゃっていいの?!大金だけど!!背に腹は変えられない!投げるか!!」
銀行員は500円玉の棒金を投げつけた!
ずががが!スライムに50のダメージ!
銀行員は10000円札の札束を投げつけた!
ずががが!スライムに100のダメージ!
「あんまり効いてないなあ、一気に投げるか。えいや!!」
銀行員は2000万円分の札束を一気にスライムに放り投げた!スライム体表にド派手に札束が突き刺さる!!当然、スライムの体表の毒が飛び散り。
「ぎゃああああああああああああ!!!!」
案の定、銀行員はその毒液を浴びて毒が回って絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
銀行員は時間を巻き戻されて、コンビニの前に立っていた。コンビニの前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
銀行員はコンビニで行きつけのコンビニでコインチョコと蒲焼の駄菓子を買って帰路に就くと、家の近所の交差点で車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかってたらひかれてたよね。怖いな、気をつけててもこういうのはどうしようもないんだけどね…。」
銀行員は、毎日几帳面に仕事をこなしていましたが、ある年に入社してきた新人が恐ろしく大雑把勝つがさつでずいぶん指導に手間取ってしまい、自分の力不足を感じて退職することになってしまったものの、お金を数える速さと正確さには定評があったので次に就職した会社の経理業務でずいぶん仕事ぶりを認められ、満足のいく仕事を定年まで続けた後70歳でこの世を去ったということです。




