クソ度胸
杉崎敦彦はごく普通のスタントマンである。週に一度は階段から落ち、月に一度は火だるまになる、齢32のスタントマンである。今日も今日とて、ビルの屋上からダイビングをした後、行きつけのコンビニで花火セットとチョコミントアイスを買って家路についていた―――のだが。
キイキイギュウ!!キイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。杉崎敦彦の魂と、女神が対面している。
「杉崎敦彦さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
杉崎敦彦(32)
レベル20
称号:転生者
保有スキル:クソ度胸
HP:80
MP:2
「というわけで、いきなり草原に放り出すのかよ!おいおい、準備とかさあ、してくんねえと何もできんぞ!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がスタントマンの前に現れた!
「おおっ?!スライムだな?!戦うのはたぶん危険だな…あのとろみはヤバイ、間違いない。」
うろたえる、スタントマン。
「まず、保有スキルを使うべきだ、クソ度胸?飛び込んで、みるか…?」
スライムは、今にも襲い掛かろうとしている!
「クソ度胸ならお手の物だ!!ど真ん中に飛び込んでやるぜ!!!
ずびっちゃーーーーーー!!!スライムのど真ん中にスタントマンの足の裏が突き刺さる!!なんとちょうど着地したところがスライムの弱点だった!スライムは飛び散ることなく力なく表面張力を失い、草原に染みていった。
てれれてっててーーー!!!レベルが上がった!スタントマンはレベルが25になった!セルフバーニングを覚えた!!
おお?!草原の向こうからやってきたのは…トレントだ!!こいつは燃えやすそうだ!!
「よーし!セルフバーニングぅうぅぅぅ・・・」
スタントマンは魔力枯渇で倒れた!トレントと一緒に燃え尽きてしまったという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
スタントマンは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
スタントマンはコンビニで花火セットとチョコミントアイスを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「はは、リアルスタントかよ!俺ならかわせたはずだけどな!!」
スタントマンは、ド派手なスタントには手を出さない方針だったものの、若手が怪我であけてしまった穴を埋めるために大脱出をやらざるを得なくなり、嫌々やった仕事が会心の出来で大絶賛されて調子に乗ってしまい、55歳のときにビル破壊脱出スタントで失敗してこの世を去りましたが、亡骸はほとんど残らなかったとのことです。




