読経
影山真道はごく普通の住職である。毎日お経を唱え、週に一度写経教室を開く、齢44の住職である。今日も今日とて、法事の後おばあちゃんの昔話につかまってなかなか抜け出せない時間を過ごした後、行きつけのコンビニで5本入りソーセージとミリンレモンを買って帰路についていた―――のだが。
キイギギギュ!!ギュイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。影山真道の魂と、女神が対面している。
「影山真道さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
影山真道(44)
レベル70
称号:転生者
保有スキル:読経
HP:50
MP:60
「というわけで、いきなり草原に放り出されてしまいましたね、まず私は何をすべきか…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が住職の前に現れた!
「スライム…。これはどう対処すべきでしょうかね。」
うろたえない、住職。
「保有スキルを使ってみましょう、読経、ふうむ…。」
うばほん!!!
住職の前にお勤めセットが出てきた!木魚やら座布団やら仏さんも出てきたよ!
「かんじーざいぼーさつぎょうじんはんにゃーはーらー…」
???なんか草原を彷徨っていたアンデッドやレイス、ゴーストたちがどんどん成仏してってるぞ!!これはすごい!
てれれてっててーーー!!!レベルが上がった!住職はレベルが77になった!お札乱舞を覚えた!賽銭投げを覚えた!結界を・・・
スライムは生きてるので読経がまったく効かない!スライムは住職を丸のみにした。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
住職は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
住職はコンビニで5本入りソーセージとミリンレモンを買って帰路についた。自宅近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかってたら自分が仏になってたって事ですね…。」
住職は、夏になるたび自分の寺の墓地に肝試しに来る小童どもが入ることにたいそう腹を立てていたのですが、ある時ひとだまが出て大騒ぎになって以降は罰当たりどもの襲撃が減り落ち着きを取り戻したものの、化け物墓地の噂が立ってしまいずいぶん辟易し、息子が住職を継いだあとも消えない噂にいまさら自作自演だったとも言えず相当苦悩した後88歳でこの世を去ったということです。




