寡聞少見
仙田康彦はごく普通の世間知らずである。
毎日好きなライトノベルを読みふけり、毎日自分の興味のある会話にしか参加をしない、齢19の世間知らずである。
今日も今日とて、大学のみんながアミノマスク談義をしているのを軽くスルーした後、行きつけのコンビニでメロンジュースとブックラマンチョコを買って家路についていた―――のだが。
ギュウッ!ギュギュギギキギュイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ぐわしゃぁああ!!
ぶちゅ。
真っ白な空間。仙田康彦の魂と、女神が対面している。
「仙田康彦さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
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仙田康彦(19)
レベル3
称号:転生者
保有スキル:寡聞少見
HP:10
MP:38
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「というわけで、いきなり草原に放り出した、女神の思惑とは。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が世間知らずの前に現れた!
「うっ!スライムが出てきた?!この世界観は…ファンタジーかっ!!」
うろたえる、世間知らず。
「保有スキルを試してみないとどうにもならなそうだな…寡聞少見…これって謙遜するやつじゃん…。僕は別にこんなこと微塵も思ってないし。僕の知識の深さを知らないやつが勝手にこんなイメージを押し付けないでほしいな。」
スライムは、今にも襲い掛かろうとしている!
「そもそもこの状況はどうなの。異世界転生においてスライムはおおよそ友好関係を結ぶパターンが多い。なのにこのスライムは僕に襲い掛かろうとしている、これは由々しき事態だ、一般的ではない。そもそも僕の知識ではこういう場合は。」
ああ、なんだこいつめんどくせえ、くっちまえ。スライムは世間知らずを丸のみした。スライムはこいつはまずそうだなと思い込んでいたことを反省した。意外とうまかったから。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
世間知らずは時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
世間知らずはコンビニで滋養強壮メロンジュースとブックラマンチョコを買って帰路に就いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「…へえ。もう少し早く通りかかってたらひかれてたかもってね。」
世間知らずは、山のように自分の好きな本を読みまくって難しい単語や四字熟語の知識はハンパなかったものの偏りがハンパなく、通常のコミュニケーションでは使いこなす機会に恵まれないばかりか何言ってんのこの人という評価しか貰えないことに嫌気がさし、人と話さなくて済む職場で働きどんどん孤独の渦に飲まれて行ったのち孤独に人生を終えているのを独居老人確認の役員に発見されたとのことです。




