安全運転
荒木直之はごく普通のタクシー運転手である。毎日お客さんを目的地までお届けし、毎日お客さんがおつりはいいよって言ってくれると幸せを感じる、齢48のタクシー運転手である。今日も今日とて、目的地に着いたのに眠り込んでて起きないお客さんを叩き起こした後、行きつけのコンビニでシャキットマムシドリンクとブラックガムを買って家路についていた―――のだが。
ギュウギッ!ギギキギュイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。荒木直之の魂と、女神が対面している。
「荒木直之さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
荒木直之(48)
レベル30
称号:転生者
保有スキル:安全運転
HP:18
MP:16
「というわけで、いきなり草原…ひろいなー。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がタクシー運転手の前に現れた!
「わあっ!スライム?!こいつはどうしたもんだ、つぶせる?」
うろたえる、タクシー運転手。
「そうだ保有スキル試してみよう、ええと、安全運転…。」
うばほん!!!
タクシー運転手がいつも乗っているタクシーが現れた!
「お客さん!乗るの!乗らないの!」
スライムは黙ってタクシーに乗り込んだ!行き先はどこでもいいや!
「周遊でいい?とりあえず草原一周するわ!!」
ごぅん!ちょっと運転が荒い気もするぞ!!まいっか!スライムは微妙に荒い運転の車の揺れが心地良くて寝入ってしまった!
「お客さん!ついたよ!!起きて!!もーしかたないな…。」
タクシー運転手は車を降りて後ろのドアを開け、眠ってるスライムを起こそうと…。
「ぎゃあああああああああああ!!!」
案の定スライムを起こそうとして体表にさわってしまい毒が全身に回って絶命した。スライムは夜遅くになるまで目を覚まさなかったという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
タクシー運転手は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
タクシー運転手はコンビニでシャキットマムシドリンクとブラックガムを買って帰路に就いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あーあ…事故は怖いからなあ…気を付けないといかんな。」
タクシー運転手は信号待ちの後の出だしが荒いとクレームを受けることが多い割には無事故で仕事を勤めあげ、表彰状をもらった後定年退職し、ご自慢の運転技術を駆使して日々活動的に過ごしていたのですが、92歳の時に車の暴走事故を起こしてこの世を去ったという事です。




