立体映像
新田恵はごく普通の映像クリエイターである。毎日魅せる映像を発表し、毎日最新のゲームエフェクトをチェックする、齢24の映像クリエイターである。今日も今日とて、トップボカロPのPV打ち合わせに行ったあと、行きつけのコンビニでタッチペンとグリーンガムを買って帰路についていた―――のだが。
キイギギギュ―――!!ギュイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。新田恵の魂と、女神が対面している。
「新田恵さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
新田恵(24)
レベル18
称号:転生者
保有スキル:立体映像
HP:20
MP:29
「というわけで、いきなり草原に放り出されたよ、サービスがなってないな。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が映像クリエイターの前に現れた!
「おお!本物のスライム?!こんなにびしゃびしゃしてんだ!!」
うろたえる、映像クリエイター。
「あ!保有スキル試してないか、立体映像!?」
うばほん!!!
いつも使っているマイパットが出てきたぞ!この中にある画像が召喚できるらしい!
映像クリエイターはダークドラゴンを呼び出した!辺りをダークソウルオーラが包み込む!スライムは気絶した!映像クリエイターは気絶した!映像クリエイターが気絶して倒れ込んだ場所は、スライムの上だった!安定の毒が回って、映像クリエイターは絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
映像クリエイターは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
映像クリエイターはコンビニでタッチペンとグリーンガムを買って帰路についた。自宅近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あと少し早く通りかかってたら新曲が止め絵になるところだったよ…。」
映像クリエイターは、次から次へと新しい魅せ方で空間を演出する映像を発表し続け、国内のみならず海外でもかなりの人気を得ましたが、まさかのハリウッドからオファーがあり二つ返事で受けたところ、信じられないくらいキャラクターの出で立ちが変わってしまい、相当苦悩したのちパッとしない出来の映画を苦々しく見たあと、68歳でこの世を去ったということです。




