郵便ですよ
児玉光義はごく普通の郵便屋さんである。毎日手紙を配達し、毎日手紙を仕分けする、齢58の郵便屋さんである。今日も今日とて、時間外窓口で宅急便を渡したあと、コンビニで行きつけのコンビニでチーズまんとホットコーヒーを買って家路についていた―――のだが。
ギュギュギ―――ギュ―――イッ!!ギュウキッギュイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。児玉光義の魂と、女神が対面している。
「児玉光義さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
児玉光義(58)
レベル50
称号:転生者
保有スキル:郵便ですよ
HP:29
MP:40
「というわけで、いきなり草原に放り出されたわけですが、どういうことなんだい、うーん。こまったね。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が赤ちゃんの前に現れた!
「うわっ!目の前にスライムですか?!武器も何もないんですよ!!どうしますかね、ううむ。」
うろたえる、郵便屋さん。
「そうだ、保有スキルを試してみましょう!よし!!郵便ですよ!」
うばほん!!!
郵便屋さんに赤い郵便かばんが装備された!スライム宛のお手紙は…これだ!郵便屋さんはスライムにお手紙を渡した!スライムはお手紙を受け取った。…ん?あれ、これよく見るとスチームさんあてだよ?スライムはお手紙を返した。
「あ、すみません、誤配ですね、ありがとう…ぎゃああああああああああ!!!」
郵便屋さんはスチームさん宛の手紙を受け取ったときにスライムの毒のついた部分を触ってしまいそこから毒が回って絶命した。スライムは、手紙がもらいたかったと泣いてしまったという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
郵便屋さんは時間を巻き戻されて、コンビニの前に立っていた。コンビニの前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
郵便屋さんはコンビニでチーズまんとホットコーヒーを買って帰路に就くと、家の近所の交差点で車の暴走事故が発生していた。
「あと少々早く通りかかってたらひかれてた?…恐ろしい話だな、明日の配達に支障が出てしまうところだったよ。」
郵便屋さんは、雨の日も風の日も郵便物をお届けし続け定年退職した後、郵便屋さん時代に体験したお届けにまつわる出来事を絵手紙にし始めたところずいぶん多くの人に認められ、個展を開くようになり、98歳でこの世を去る前日まで絵筆を握っていたとのことです。
なお、生涯に書いた絵手紙の枚数は、1000枚を超えたそうです。




