フラワーマジック
佐野ちなみはごく普通のフラワーコーディネーターである。毎日フラワーブーケをつくり、毎日花屋のチェックを怠らない、齢24のフラワーコーディネーターである。今日も今日とて、結婚式場にどでかいフラワーアレンジメントを納品した後、行きつけのコンビニで輪ゴムとローズヒップティーを買って店に戻ろうとしていた―――のだが。
ギュキュ―――ギュキュキキイッ!!キュウギュウキギュ―イイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。佐野ちなみの魂と、女神が対面している。
「佐野ちなみさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
佐野ちなみ(24)
レベル16
称号:転生者
保有スキル:フラワーマジック
HP:17
MP:20
「というわけで、いきなり草原に放り出されては…どうしようもないのでは…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がフラワーコーディネーターの前に現れた!
「えっ!!!スライム?!どうするの、どうしたらいいの、ええ?!」
うろたえる、フラワーコーディネーター。
「あっ、そうだ、保有スキル!!フラワーマジック?」
うばほん!!!
空から色とりどりのお花が降ってきた!すごくきれい!スライムは見とれている!フラワーコーディネーターもみとれている!草原のスライム周り一面を可愛い花が埋め尽くした!スライムは大喜びだ!大喜びで花を食べている!!もうじき花がなくなりそう!
「ヤバイ!もっと花を出さないと、私が食べられちゃうかも!フラワーマジック、フラワーマジック・・・。」
スライムまわりとフラワーコーディネーターまわりにかわいい花が降り積もってゆく。スライムが花に夢中になっている隙に、フラワーコーディネーターはそろりそろりと逃げ出した。しかし、大量の花がフラワーコーディネーターのゆくてを阻み・・・。
ぶにゅ!
「ぎゃあああああああああああ!!!!!」
フラワーコーディネーターは花に隠れていたスライムを踏みつけてしまった!ずぼりとハマってしまったので、足首から毒が回ってしまい、フラワーコーディネーターは絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
フラワーコーディネーターは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
フラワーコーディネーターは行きつけのコンビニで輪ゴムとローズヒップティーを買って帰路に着いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょっと早く通りかかってたらひかれてたよ…!明日も大きいアレンジメントあるんだからさあ…。」
フラワーコーディネーターは、お客様のイメージに合わせたブーケ作りが好評だったので、結婚式場でブーケ教室を開かせてもらったところ非常に人気を呼び、本業以上に時間を割かなければならなくなり相当葛藤した後独立し小さな花屋兼教室を開いた結果情報雑誌に特集を組まれるくらいの人気を呼び、ずいぶん忙しい人生を送ることになりましたが花に囲まれることが一番幸せだとにっこり語って75歳でこの世を去ったということです。




