投網
生田清はごく普通の漁師である。毎日刺身を食い、毎日船に乗る、齢55の漁師である。今日も今日とて、明日の漁に備えて船の整備をしたあと、コンビニでビーフジャーキーといいちとを買って帰路についていた―――のだが。
ギュギュギ―――ギュ―――イッ!!キュウギュウキッギュイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。生田清の魂と、女神が対面している。
「生田清さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
生田清(55)
レベル60
称号:転生者
保有スキル:投網
HP:68
MP:10
「というわけで、いきなり草原に放り出しやがって!こんのやろぅー!!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が漁師の前に現れた!
「うお!目の前にくらげ…ちゃうな、スライムか?!武器も何もねぇんだぞ?!」
うろたえる、漁師。
「おうい!保有スキルを試してねーわ!!ええと!!投網ぃ?!」
漁師は投網を打った!スライムが捕獲される!
「おお!大漁大漁!!」
漁師は捕獲したスライムを確認しようと手を伸ばした。
「ぎゃああああああああああああ!!!」
なぜ手袋をしない!!ああ、投網が打ちにくいからか…。残念です、漁師は毒が回って絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
漁師は時間を巻き戻されて、コンビニの前に立っていた。コンビニの前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
漁師がコンビニでビーフジャーキーといいちとを買って帰路に就くと、家の近所の交差点で車の暴走事故が発生していた。
「なんだよ!もうちょっと早く通りかかってたらひかれてたやつじゃねーかっ!」
漁師は、漁に出るのがきつくなってきたのでつり好き向きの出航ツアーを企画したところ大当たりし、予約につぐ予約でてんてこ舞いになったものの息子が仕事をついでくれたのでずいぶん楽になり、船を下りて魚のさばき方を指導するようになり、その結果78でこの世を去るまで毎日刺身を食べ続けていたとのことです。




