組み立て
金子定悦はごく普通の自動車整備士である。毎日車の下に潜り、毎日ボンネットを開ける、齢50の自動車整備士である。今日も今日とて、べこべこに凹んだドアを取り替えた後、行きつけのコンビニでカー雑誌とエナジーモンチュールを買って家路についていた―――のだが。
ギュウギュキュギュキュ―――キキ―――ッ!キュギギキギュイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。金子定悦の魂と、女神が対面している。
「金子定悦さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
金子定悦(50)
レベル45
称号:転生者
保有スキル:組み立て
HP:42
MP:15
「というわけで、いきなり草原に放り出されたよ、困るなあ、うーん。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が自動車整備士の前に現れた!
「うわっ!スライムだ?!これはどうしたもんかね。」
うろたえる、自動車整備士。
「ああ、保有スキル試してみよう、…組み立て?なんちゅー大雑把な!!そもそも何をどう組み立てるの!!!」
うばほん!!!
ドアの取れている中古車が現れた!ハンドルも取れてるぞ!よく見ると座席もない!自動車整備士に整備道具一式が装備された!オートリフトも完備されている!
「これを組み立てろと?!…やったるわ!!!」
自動車整備士はきっちり車を組み立てた!よし!試乗だ!!スライムは車に乗せてもらえると思ってわくわくしている!
「よーし、これでスライムをひき殺せば…勝てる!!!」
自動車整備士は、車に乗り込むとわくわくしているスライムを轢いた!飛び散るスライム片!しかし車の中の自動車整備士は毒を浴びる危険がない!
てれれてっててーーー!!!レベルが上がった!自動車整備士はレベルが48になった!新車召喚を覚えた!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!
野良ベヒーモスが敵が来たと勘違いして盛大に車に突進した!自動車整備士は絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
自動車整備士は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
自動車整備士はコンビニでカー雑誌とエナジーモンチュールを買って帰路に就いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「ちょっ!!もうちょっと早く通りかかってたら完全アウトだった奴だよ!…手伝ってくるかな。」
自動車整備士は、仕事以外でも街中で立ち往生している故障車を助けたりして徳を積みつつがんばっていたところ、たまたま助けた人が投稿した記事が全国放送のテレビで紹介され大変に賞賛を浴びることとなりずいぶん恥ずかしがることもありつつまじめに仕事を続け、退職後は子供や孫の車整備に尽力し82歳でこの世を去ったということです。




