サービス、サービスぅ!
山村信一郎はごく普通の居酒屋店オーナーである。毎日客と酒を酌み交わし、毎日これ僕から!と手作りの漬物をサービスする、齢40の居酒屋店オーナーである。今日も今日とて、ビールサーバーのタンクを付け替えた後、行きつけのコンビニで紙袋と仁丹を買って店に戻ろうとしていた―――のだが。
ギュキュ―――ギュキュキキイッ!!ギュウキギュ―イイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。山村信一郎の魂と、女神が対面している。
「山村信一郎さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
山村信一郎(40)
レベル27
称号:転生者
保有スキル:サービス、サービスぅ!
HP:33
MP:27
「というわけで、いきなり草原に放り出されてもこまっちゃうよね!どうすんの!!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が居酒屋店オーナーの前に現れた!
「おわっと!!!スライム出たー!!ちょっと!!武器?防具?なんもないし!」
うろたえる、居酒屋店オーナー。
「そうだ、保有スキル!!サービス、サービスぅ!…ってなんだ?!」
うばほん!!!
居酒屋店オーナーの前に、店のテーブルが現れた!ビールサーバーも熱燗サーバーもドリンクバーサーバーも全部ある!テーブルの上には、今日のお通しの肉じゃががあるぞ!
「さあさあ、お客さん!ビールでいい?今日もお疲れでしたー!カンパーイ!!」
スライムはビールで乾杯した!!いい飲みっぷりだ!!すかさず居酒屋店オーナーはおかわりを渡す!そしてご自慢の漬物をスライムにおススメした!
「これね!僕が漬けてんの!ちょっぴりマスタ-ドいれるのがいいんだよ!カブ漬け!」
スライムはカブ漬けを食べてみた…これはうまい!!!刺身盛り合わせに串焼き盛り合わせ、ポテトサラダに叩きキュウリ…どれもこれもうまい、うますぎる!ぐびぐびぐび…酒が進むのなんの!!
「いやあスライムさん!いい飲みっぷりだね!!イエーイ!!」
すっかり出来上がった居酒屋店オーナーとスライムはハイタッチをかわし。
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
安定の毒で居酒屋店オーナーは絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
居酒屋店オーナーは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
居酒屋店オーナーは行きつけのコンビニで紙袋と仁丹を買って店に戻ろうとしていた。店の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「ちょっと!!うちの店の近くで困るよ!!」
居酒屋店オーナーは、あの騒ぎでずいぶん経営に陰りが見えてひやひやしたものの、もともと丁寧な調理が自慢の店だったこともありお弁当販売が絶好調でずいぶん利益を上げ、店の改築に着手することができるようになりモダン且つハイセンスな内装と時代にマッチしたメニューが人気を呼び連日テレビ取材を受けるようになった結果、その経営でひいひい言うはめになりましたが充実した日々を送って72歳でこの世を去ったという事です。




