ボール担当者なめんなよ
竹部美紀はごく普通のスポーツ用品店スタッフである。毎日ラケットのガットを張り、毎日新作ウェアのチェックを怠らない、齢29のスポーツ用品店スタッフである。今日も今日とて、スクール水着の在庫をチェックしたあと、行きつけのコンビニでゴルフ雑誌とミネラル麦茶を買って家路についていた―――のだが。
ギュウギュキュ―――キュキュ!!キギュイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。竹部美紀の魂と、女神が対面している。
「竹部美紀さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
竹部美紀(29)
レベル6
称号:転生者
保有スキル:ボール担当者なめんなよ
HP:65
MP:10
「というわけで、いきなり草原に放り出したよ!ひどいよ!ねえ!!もー!!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がスポーツ用品店スタッフの前に現れた!
「うげ!スライムじゃん?!ちょっとちょっとこんなんきいてないよ、どーするのさあ!」
うろたえる、スポーツ用品店スタッフ。
「はっ!保有スキルある!ボール担当者なめんなよ?!わかった!ボール召喚できるやつだな…やったるわ!!!硬式テニスボールっ!!」
うばほん!!!
スポーツ用品店スタッフの手に硬式テニスボールが現れた!スポーツ用品店スタッフは硬式テニスボールをスライムに投げつけた!ボスっ!!スライムに2のダメージ!!
「よーし!バスケットボール!ドッジボール!ゴルフボール!バレーボール!フットボール!ハンドボール!ソフトボール!野球ボール!セパタクローにウォーターポロ…」
スポーツ用品店スタッフは魔力枯渇で倒れた!たくさんのボールに囲まれながらスライムはスポーツ用品店スタッフを捕食した。たくさんのボールは、草原のモンスターたちが毎日遊んでいるようだがたまに取り合いになっているらしい。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
スポーツ用品店スタッフは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
スポーツ用品店スタッフはコンビニでゴルフ雑誌とミネラル麦茶を買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あと少し早く通りかかってたら明日の小学校の水着販売行く人いなくなってたやつだよ、怖いねえ。」
スポーツ用品店スタッフは、テニスボールを誤発注して店舗入り口に信じられないほど山積み販売する羽目になったものの持ち前の明るさとごり押しで何とかすべて完売させることができ、大した自信を持ったもののメーカー合併によるあおりを受けて勤務店舗が閉店してしまい相当凹んだあと街の小さなスポーツ屋に嫁いでのんびり営業を続け80歳でこの世を去ったという事です。




