猛獣使い
折戸弘明はごく普通の飼育員である。毎日ライオンにえさを与え、毎日動物園新聞に載せる写真を撮る、齢35の飼育員である。今日も今日とて、動物園閉園後、行きつけのコンビニで動物ビスケットと無脂肪牛乳を買って家路についていた―――のだが。
キキィイイ!!キイイイ――イイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。折戸弘明の魂と、女神が対面している。
「折戸弘明さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
折戸弘明(35)
レベル20
称号:転生者
保有スキル:猛獣使い
HP:48
MP:19
「というわけで、いきなり草原に放り出されたなあ、さてさて、どうしましょうかね…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が飼育員の前に現れた!
「うひゃ!スライムが現れた!!これって戦わないとだめな奴?ちょっと待ってよ…。」
うろたえる、飼育員。
「あ!保有スキルを試してないな…猛獣使い?!飛躍しすぎだよ!!俺ライオンにえさしかやってないよ?!!」
うばほん!!!
がおー!!ライオンが現れた!!
「ひゃ、ひゃああああああああああああ!!!」
飼育員は逃げ出した!!わあ!!あっちゅー間にライオンにがじーされてる!!スライムはあきれている!あんた自分で呼び出しといてなんなん?ライオンに食いつかれた飼育員は絶命した。スライムはライオンを捕食した。なんと言う食物連鎖。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
飼育員は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口に立っていた。コンビニに入る前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
飼育員は動物ビスケットと無脂肪牛乳を買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかっていたらひかれてた?ライオン係は俺しかいないからなあ…危なかったな。」
飼育員は、動物園で働き始めたときから世話をしてきたライオンが死んでしまいずいぶん落ち込んでしまいましたが長生きするゾウガメの飼育係になり、長年世話を続けたのち70歳でこの世を去ったということです。
なお、ゾウガメはまだ生きているそうです。




