言い訳
田村健吾はごく普通の理屈屋である。毎日持論を展開し、毎日新聞に世論に対する苦言を投稿する、齢58の理屈屋である。今日も今日とて、自分の家の柿の木が隣の家の塀を乗り越えている件についてヘンテコ理論を駆使してやりこめた後コンビニで週刊社説とフェルトペンを買って家路についていた―――のだが。
ギュキュギュイッ!!キュギュキキキキイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。田村健吾の魂と、女神が対面している。
「田村健吾さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
田村健吾(58)
レベル68
称号:転生者
保有スキル:言い訳
HP:10
MP:103
「というわけで、いきなり草原に放り出す、へえ、こんな不躾且つ横柄な態度で世界を渡らせるその神経が信じられない、準備不足も甚だしい。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が理屈屋の前に現れた!
「はあっ?!スライム出てきたよ!武器すら渡されず、なんという不手際極まりない!頭おかしいだろう、普通何も生きる手立てを与えず放置するなんてありえない。とんだ茶番だ!今すぐ元の世界に返してもらえんかね!こんな世界は俺のいる世界じゃない!」
ごろ、ごろ、ごろ…何やら天空の様子が禍々しいぞ!!スライムは逃げ出した。
「俺を何だと思っているんだ!こんな何もない場所で一生を終えていい存在じゃないんだぞ!世を正し世界を導く、それが俺の使命なんだよ!!こんなクソみてえな草っぱらにいていい人間じゃないんだ!毎日世界の頭の沸いたクソどもに俺の知識と知恵と教えを知らしめなきゃいけねえんだよ!!いいか?そもそも俺の存在こそが神なんだよ、なんだよあのクソ女神はよぉ、自分勝手にこんなところに放り出すとか馬鹿の極み、いや馬鹿ですらない、いわゆるカスだ!!俺みたいになあ、崇められて当然の…」
突如天から雷が落ちた。理屈屋は気絶した。辺りにスライムがいないので捕食されない。理屈屋は目を覚ました。口を開く前に突如天から雷が落ちた。理屈屋は気絶した。理屈屋は目を覚ました。口を開く前に突如天から雷が落ちた。理屈屋は気絶した。理屈屋は目を覚ました。口を開く前に突如天から雷が落ちた。理屈屋は気絶した。理屈屋は目を覚ました。口を開く前に突如天から雷が落ちた。理屈屋は気絶した。理屈屋は目を覚ました。口を開く前に突如天から雷が落ちた。理屈屋は気絶した。理屈屋は目を覚ました。口を開く前に突如天から雷が落ちた。理屈屋は気絶した。理屈屋は目を覚ました。口を開く前に突如天から雷が落ちた。理屈屋は気絶した。理屈屋は目を覚ました。口を開く前に突如天から雷が落ちた。理屈屋は気絶した。理屈屋は目を覚ました。口を開く前に突如天から雷が落ちた。理屈屋は気絶した。完全に脳みそが焼ききれてしまった理屈屋は、誰に捕食されることもなく、ただ生き永らえた後土になったという。
「う、うーん???あれ??」
理屈屋は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
理屈屋は行きつけのコンビニで週刊社説とフェルトペンを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あとちょっと早く通りかかってたら損害賠償責任発生案件だ、書類作成もめんどくさい事になってたはず、怖いな。」
理屈屋は相当たくさんの人を独特の言葉回しでやりこめまくりましたが、寄る年波には勝てず口げんかに勝てることがだんだん少なくなり、伝えたいことを伝える能力が著しく低下して自信を無くしたものの食欲は旺盛で無口にはなったけれども健康で、晩年は耳が遠くなって会話することはめっぽう減りケンカをすることもなくなって穏やかに107歳まで生きたという事です。




