テンパるテンパれテンパろう!
竹下益菜はごく普通のあわてものである。毎日カップ麺を硬いまま食し、毎日信号が青になる前に渡り始める、齢28のあわてものである。今日も今日とて、予約日の前日に書店に出向きまだ入荷してませんと言われてすごすご帰ってきた後、行きつけのコンビニで早ゆでマカロニとかけるだけのパスタソースを買って家路についていた―――のだが。
ギュキュ―――ギュキュキキイッ!!キ―イイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。竹下益菜の魂と、女神が対面している。
「竹下益菜さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
竹下益菜(28)
レベル4
称号:転生者
保有スキル:テンパるテンパれテンパろう!
HP:10
MP:10
「というわけで、いきなり草原に放り出、ひぃいいいいいいいいい!!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊があわてものの前に現れた!
「うひえあああああ!!!スライムっぅううううう!!!はひぇうぇはわ!!あが、あが…。」
うろたえすぎる、あわてもの。
「あわ、保有スキル!!テンパるテンパれテンパろう!はひ――――――?!」
スライムは、あまりのテンパりっぷりにビビっている!ちょっとは落ち着いたらどうなんだ…。
「あ、はひ、ええええとわたわたわたしは!!!ひぃいいいい!!!ええと急ぎます?ええ急ぐんですね、はい、わかりました失礼します、ハイハイはわあ!!!」
何やら意味の分からないことを言ってあわてものはスライムの前から逃亡した。あてもなく草原をただ突っ走っていた慌て者は、穴に落ちて動けなくなっていたところをアナコンダに見つかってそのままパクリと捕食された。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
あわてものは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
あわてものは行きつけのコンビニで早ゆでマカロニとかけるだけのパスタソースを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「はわわ、ちょっと早く通りかかってたらひかれてた?!ヤバイ、ヤバス、やばみ!ひいー、恐ろしや―!」
あわてものは、毎日忙しく仕事をしていたある日締め切り時間に間に合わなくなる恐怖感に打ち勝つことができず職場を無計画に飛び出した結果暴走してきた車と正面衝突をしてしまい、危うく人生を生き急ぎ過ぎてしまいそうになりましたが何とか踏みとどまり、長い入院中に落ち着いた人生の歩み方のヒントを得ることができて以降は横に立つ人と足並みをそろえて前を向けるようになって89歳でこの世を去るときには、のんびりおばあちゃんと呼ばれていたという事です。




