俺がいいと思ったらそれが正義、お前は悪、つまり倒されて当然
谷野清太郎はごく普通のおせっかいである。毎日気に入った人をいじり、毎日気に入らない人に説教を垂れる、齢45のおせっかいである。今日も今日とて、悩んでいる人の悩みを盛大にいろんな人に暴露して解決法を探った後、行きつけのコンビニでコーヒーコーナーの汚れをおしぼりで拭いてあげてから家路についていた―――のだが。
ギュキュギュキュ―――キキ―――ッ!キイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。谷野清太郎の魂と、女神が対面している。
「谷野清太郎さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
谷野清太郎(45)
レベル50
称号:転生者
保有スキル:俺がいいと思ったらそれが正義、お前は悪、つまり倒されて当然
HP:44
MP:60
「というわけで、いきなり草原に放り出された!!おいおい、何考えてんだ!!あほか!!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がおせっかいの前に現れた!
「おおおっ!スライムでてきとるやんけ!!武器は!防具は!なにも用意されてない、この不手際!!」
うろたえる、おせっかい。
「ああ、保有スキル試せば何とかなりそう…俺がいいと思ったらそれが正義、お前は悪、つまり倒されて当然って、なんだこれ!!俺が悪いやつみたいになってるじゃねえか!!」
スライムは、今にも襲い掛かろうとしている!
「俺はなんも悪くねえぞ?!良かれと思ったことをひとにすすめるのは人として当然の事だろうが!人はみんな間違えるもんだ、それを正してやってこそ先を生きているものだろう!おい、お前はいくつなんだ?俺は45だ、ずいぶん山あり谷ありの人生を送って、経験も豊かだしお前のためになる話の1つでもしてやれるはずなんだ。俺の話をまず聞いてみんか、ええ?!」
はっ!!たかだか45年が何いっとんじゃ!こっちは4億年生きとんじゃドアホう!!スライムはお節介を遠慮なく捕食した。ずいぶんエグみのあるのどごしだったという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
おせっかいは時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
おせっかいはコンビニのコーヒーコーナーの汚れをおしぼりで拭いてあげてから帰路に就いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょいと早く通りかかってたらお隣の梅田さんの縁談すすめられなくなってたやつだよ、怖いなあ。」
おせっかいは、人の背中を押したつもりで突き倒していたり抱きしめたつもりがベアハッグをキメることになったり寄り添ったつもりが押し潰していたりと相当やらかした結果だんだん孤立していってしまい、70歳でこの世を去る頃にはおせっかいを焼く相手がペットの犬だけになっていたとのことです。




