表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/19

謎の屋敷 3

「ここはゲームデータと元々の異世界、二つが混ざり合った世界なんです」


 プロネアはそう切り出した。


「ですからゲームのモンスターや、魔法が出てくるんですよ」

「そういえば……」


 この屋敷に来る前に出会ったモンスター。

 あいつは確か……


 ふいに記憶が蘇り、あのときの出来事がフラッシュバックする。


 ――オーヴェミウス。


 そう、あいつはゲームに登場していたモンスターだった。

 獣種の中でも上位の相手で、攻略推奨レベルは60。

 どうにか一体だけは倒したのだけど……

 仲間を呼ばれて囲まれて、死にかけたところをプロネアに助けてもらったんだ。


「思い出してきたようですね」

「う、うん。少しだけ。でも、まだ途中の記憶が抜けてるみたい……」

「おそらく脳に負荷がかかり過ぎた後遺症でしょう。追い込まれたあの状況で、いきなりワールドフレームを起動させたのですから無理もありません」

「ワールドフレーム?」

「クトリール様のユニークスキルですよ」


 そういえば、以前の俺はステータスを見れたんだよな。

 かつて思い出した記憶を、再びたぐり寄せる。


 ――スキル詳細、ワールドフレーム

 :この世界と同等の力を持つスキル拡張型フレームです。


 そうだ。

 こんな感じのスキルだった。


「ワールドフレームは、この世界で最強とも言える能力なんですよ」

「へー、まったく実感はないけど」

「使いこなせていないのですから、当然です」


 ふむ、そんなものか。

 そう言われれば、納得できる。

 とはいえ、使いこなそうという気持ちにはならないけど。

 

「プロネア。どんなにすごいスキルであったとしても、俺の目的は元の世界に帰ることなんだよ。それに役立たないスキルならいらないかな」


 俺は異世界での最強よりも、元の世界でエンジニアになりたいんだよ。

 最先端の科学技術を求めてるんです!


「ふふっ、クトリール様。どうしてワールドフレームが最強なのか。その理由を知れば、そんなことも言えなくなりますよ。なにせこのスキルは、世界の片割れとしての業を背負っているのですから」

「ど、どういうこと」


 脅かすようなこと、言わないで欲しい。

 

「そもそも、どうしてこの異世界はゲームのデータと混ざり合ってしまったのか。ということですよ。心当たりがありますよね。あのフェンネスを持ち込んだクトリール様でしたら」

「……うん、あるよ。心当たり」


 なんとなくな。

 少し前に、自分でもそれに思い至ったような気さえする。


 ――『アプリ間情報互換システム』


 フェンネスに保存されていた特殊なデータ。

 それがどういうわけか、この異世界に作用したらしい。

 おかげでこの世界は、ゲームの電子情報を取り込んでしまった。

 結果だけみると、そういうことになる。   


「そうです。クトリール様がお察しの通り。この世界はフェンネスが原因で、ゲーム風の異世界に変わってしまったんです。とはいえ、クトリール様が悪いわけではありません」

「どうして。俺がプログラムを作ったから、こんな状況が生まれたんだろ」

「それが違うんですよね」


 彼女は俺の言葉を否定すると、優しく語り始めた。


「いいですか、ただの電子情報に過ぎないプログラムが世界を変えるなんて、普通に考えればあり得ないですよね。ですけどひと手間加えれば、それは可能になるのかもしれません。私が魔法を電子情報化したように、何者かが電子情報を魔法化したと考えるのが妥当です。つまり、クトリール様は何者かの手によって異世界に呼ばれ、そのデータを悪用されたわけです」


 なるほど、俺はただその運び屋として利用されたわけか。

 でもこれって……


「ねぇ、プロネア。つまりこの話からすると、帰る方法はあるってことになるよな」

「そうですね。理論的には逆のプロセスを再現できれば帰れるはずです」

「それはプロネアでもできるよね」

「分かりません。異世界に召喚なんて、まるで理論が見えませんから」


 さすがにプロネアでも、データがない技術は学習できないらしい。

 そうなると、俺をこの世界に呼んだ犯人を見つけるのが早いだろう。

 理論さえ分かれば、プロネアが解析して学習してくれるはず。


「だったら、さっそく見つけに行くよ」

「えっ、今話を聞いたばかりなのに、あてはあるんですか!?」

「ない。だから冒険者ギルドに情報提供を呼びかけよう」


 ゲームの世界が混ざってるなら、ギルドくらいあるだろ。


「それはいいですけど、報酬のお金やアイテムは用意できるんですか」

「あいにく手持ちはない。プロネアは?」

「私ですか。えーっと、多少のお金ならありますけど……」


 彼女は上目づかいで、心配そうな顔をしている。

 あんまり使って欲しくなさそうだ。

 たぶん生活費とか、手をつけてはいけないお金なんだろう。


「仕方ない。最初は地道に稼ぐか」

「それがいいと思います。ワールドフレームを使いこなす訓練にもなりますし」

「そういえば、これってどんなところが最強のスキルなんだ」

「全てのユニークスキルが習得可能なところですかね」

「えっ!?」


 思ったよりも便利そうなスキルだったみたい。   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ