ギルド 2
探して欲しいパーティーメンバー?
「プロネアの知り合いなの」
「いえいえ、そういうことではないのですよ。ただ、条件に合う人間を探して欲しいという意味です」
「条件ですか。一応、希望だけは伺いますよ」
ギルドのお姉さんが、少し困った顔をしている。
今日冒険者になったばかりの新人が、いきなり無茶を言ってるとか思ってそう。
それでも話だけは、聞いてみてくれるみたいだけど。
「ありがとうございます。では、言いますね。まず短期間で急成長したとか、信じられないスピードで昇格したとか。そういう急成長を見せた冒険者を探してます」
「急成長中の冒険者ですか、確かにたまにいますね。そういう人は」
「はい。そういった方を紹介して欲しいんです」
「えー、でも難しいかもですよ。急成長中の冒険者は、注目されやすいですから他のパーティーメンバーから勧誘を受けやすいですし、レベルの高いメンバー同士で組んだりしますから。今から君たちが誘っても、たぶん相手にされないかな」
「低ランクの冒険者で、急成長の人はいないんですか」
「そんな人は……あっ、この子なんかそうかも」
お姉さんは名簿を開きながら、誰かを見つけたらしい。
「名前はクランセラちゃんって言うの。ちょうどパーティーメンバーを受付中ね。ここ数か月でFランクからDランクに昇格した急成長中の冒険者よ」
「それではその子を、紹介して下さい」
「いいですよ。最近は毎日ここにも通ってるみたいですから、待ってればそのうちやって来ると思いますが、どうしますか。話は伝えておくので、また明日来てもらってもいいですけど」
「ここで待ってます」
「分かりました。それでは来たら、お知らせしますね」
「はい。よろしくお願いします」
話がまとまったので、俺たちはその場を離れた。
そしてプロネアと二人になったところで、彼女が話しかけてくる。
「それではクトリール様、待ってる間にギルドの他の施設を見てみましょうか」
「いいけど、他に何があるの」
「ギルドにある施設は換金所に掲示板広場、あとは休憩所や酒場ですよ。主に使うのは前者2つなのですが、まずは掲示板広場に行きましょう」
「うん。いいよ」
そうして話しながら歩いていると、目的地にはすぐに着いた。
大きめの施設と言っても、屋内施設だからな。
そんなに距離があるわけじゃない。
「ここでは、様々な人の依頼が張り出されてるんです」
「へー、でも俺はこの世界の文字が読めないんだ」
「アナライズ/カリキュレートを使えば、日本語に変換できますよ。設定で自動変換にしておけば便利です。あっ、ちなみに日本語以外にも、この世界のあらゆる言語に変換可能です」
「そうなんだ。それはすごく助かる」
俺はさっそくメニューから、アリゼレートの設定を開いてみる。
えーとっ、言語自動変換で日本語を選択して……
これで読めるようになったのかな。
ふたたび、掲示板の張り紙に目を向けた。
「おっ。本当に読めるようになってるな。なるほど。特別な護衛が欲しいだとか、モンスターを倒して欲しいだとか。そんなことが書いてあったのか」
「そうですよ。ここにある依頼を引き受けると、報酬が貰えるんですよ」
「へー、本当だ。王都までの護衛の依頼で、報酬は80万ヴェイト」
「ヴェイトっていうのは、この国での通貨ですね。金貨で換算するとだいたい20万ヴェイトが金貨1枚分くらいです。現金だけでなく、ある程度は金貨や銀貨も持っておいた方がいいですよ」
「どうして」
「例えば精霊族やドラゴン族との取引では、金貨などが使用されますからね」
あくまでヴェイトは人間が使ってる通貨ってことか。
そんな会話をしつつも、俺たちは掲示板に貼ってある依頼を見てまわる。
すると一つの募集が張り出されているのが、視界に入った。
目立つように、かなり大きな紙が使われている。
「これはこの街の貴族が、大々的に冒険者を集めているものですね」
「ダンジョン攻略の募集って書いてるよ。近々、最深部の攻略を目指して大規模編成を行う予定があるために、数多くの冒険者を募集する。希望者はギルドに申し込みをして下さい、だって」
「ここのダンジョンは未だに最深部まで攻略がされてませんからね。とはいえ、冒険者を数だけ集めたところで、それが叶うというものでもありませんが。ともかく無視をしておいていいでしょう」
「ふーん、そうなんだ。俺たちと目的が同じだから、焦ったよ」
「クトリール様。ダンジョン攻略は、皆が目指してることですよ」
「それもそっか」
さすがプロネア、客観的に判断することは得意なんだね。
確かにそう考えれば貴族が主導してるからって、焦ることもないか。
俺たちは、しばらく掲示板広場で時間を潰していく。
それから1時間くらいが経った頃、先ほどのお姉さんがこちらにやって来た。
「あっ。見つけましたよ、クトリールさん、プロネアさん。さっき話していたクランセラちゃんがギルドにやって来ました。彼女にはもうお話しは通しているので、休憩室で待ち合わせってことになってます」
「そうなんですか。ありがとうございます。それでは向かってみますね」
「よろしくです。クランセラちゃんは金髪でツインテールの女の子ですから、すぐに分かると思います。あと今日の服装はピンクのショート丈の服からお腹を出した格好に、黄色いミニスカートでしたよ」
「詳しくありがとう。たぶん大丈夫」
アリゼレートを使えば、それくらいは簡単に分かるからな。
こうして、俺たちは休憩室へ向かうことにした。




