ギルド
しばらく歩き、ようやくギルドに到着した。
ちょっと大きめの施設だな。
とにかく中に入ろう。
俺たちはギルドの扉を開けた。
そして少し進むと、プロネアが話しかけてくる。
「さてクトリール様。ギルドにはいろんな施設が入っておりますが、まずは冒険者としての加入登録を済ませちゃいましょう。こちらですよ」
彼女はこの街にも、ギルドにも、詳しいみたいだからな。
任せておこう。
プロネアについていくと、ギルドのお姉さんが座るカウンターへとやってきた。
「あの、よろしいですか。冒険者登録をしたのですが」
「はい。こちらで承っておりますよ。お二人ともですか?」
「ええ、そうです」
そうプロネアが答えると、お姉さんは1枚の紙を俺たちに手渡してきた。
「こちらが申込用紙になりますので、ご記入下さい」
「分かりました。私が二人分を書いてもいいですよね」
「それは構いませんが、最後のサインだけは直筆でお願いしますね」
「ええ、大丈夫です」
プロネアが俺の分まで、書いてくれるのか。
それは助かる。
よくよく考えれば、俺はこの世界の文字を知らないからな。
「それではクトリール様、ここに名前を記入して下さい。サインなので、日本語で大丈夫ですよ」
「分かった。九遠(くとう)……じゃなくて、クトリールっと」
「はい。ありがとうございます」
危うく本名を書きそうになってしまった。
この世界ではクトリールだからな。
日本語で大丈夫という言葉に、つられてしまったじゃないか。
「こちらでいいですよね」
プロネアがお姉さんに書類を渡すと、彼女はそれをチェックしていく。
一通りそれも済ませると、今度はカードを手渡してきた。
「登録が終わりましたので、証明書をお渡ししますね。ギルドに加入した証ですよ。皆さんからはギルドカードと呼ばれてますね。それがないとダンジョンに入れないので注意して下さい」
そういえば、
プロネアもギルドに加入しないと、ダンジョンに入れないとか言ってたな。
ちょっとギルドのお姉さんに聞いてみよ。
「このカードがないままダンジョンに入ろうとすると、どうなるの?」
「ギルドの警備員に止められます」
「えっ……」
「ですからギルドがダンジョンを管理してるので、それがないと入れません」
「そ、そうなんだ」
「ダメですよ。冒険者になるのでしたら、それくらいは知っておかないと」
「う、うん」
「もう仕方ないですね。本当に初心者みたいですから、ギルドの仕組みを簡単に説明しちゃいます。本当はここまで丁寧に教えないのですけど、後から文句を言われても困りますから」
なんか渋々ながら、お姉さんが話し始めた。
「さっきも言った通り、ギルドがダンジョンを管理しています。そして、ダンジョンで得たアイテムや宝には税金が課せられますよ。ですからアイテムを換金したい場合は、ギルドの換金所でお願いしますね。自動的に税金を引いた金額が計算されますので。また、そのままアイテムを得たい場合は、税金分を逆に払って下さい。たったの30%です。ちなみに誤魔化すと重罪になりますので、ギルドから追放されて二度とダンジョンに入れなくなりますよ」
お姉さんはそう説明をすると、分かりましたか、という顔でこちらを見てきた。
おい、こんな重要な説明をせずにダンジョンに行かせようとしたのかよ。
文句を言いたくなったけど、プロネアがそっと注意してくる。
「クトリール様。この世界ではこれくらいのこと、子供でも知ってるので、あまり騒がない方がよろしいかと思われます。黙っていて下さい」
「えぇーっ!」
「後で説明しようと思ったのですが、申し訳ありません」
まあ……
プロネアにも説明の順番とか、あったんだろうしな。
あんまり自分勝手を言っても仕方ない。
「ともかく、これでダンジョンには行けるようになったんだよね」
「はい。さっそく行ってみましょう」
二人でそんなことを話してると、お姉さんが会話に入ってくる。
「ねっ、ところで君たちはまだパーティーメンバーを揃えてないよね。いま登録したばかりだもんね。だったらここで、メンバーを集めて行かないかな?」
プロネアと顔を見合わせる。
俺としては、特に必要性を感じないけどな。
プロネアの魔法だけでも十分だと思うし。
「クトリール様、ここは私に任せて頂いてもよろしいですか」
「えっ、いいけど……」
意外にもプロネアは断らないらしい。
どうやら、何か考えているようだ。
「こちらからも、探して欲しいパーティーメンバーがいるんです」
彼女はお姉さんに、そう伝えた。




