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特訓編 6

 しばらく森を進んでいる間、

 戦闘が起きてもプロネアは見てるだけで、戦うのは俺だった。

 まあ楽勝だったけど。

 そうして森を抜けて平原に出た頃、プロネアが忠告してくる。


「クトリール様。先ほども申しあげましたけど、ここからは大型モンスターも出現してきます。さすがに大型モンスターはクトリール様にはまだ早いので、そのときは任せて下さいね」

「大型って、そんなに強いんだ」

「だいたい1000レベル越えが普通になります」

「えぇーっ、プロネアは勝てるの?」

「もちろんです」

「プロネアってレベルいくつだっけ」

「284ですよ」

「……本当に勝てるの?」


 疑わしく彼女を見ると、彼女はすねながらも答える。


「勝てますよ。これでも魔法は得意なんですから」

「そう言えば初めて出会ったときも、魔法で助けてくれたよね」

「はい。古代精霊魔法です。さらにアナライズ/カリキュレートで魔力の流れを最大限に利用すれば、通常の数倍ものダメージを与えられるんですよ」

「へぇー、そんなこともできるのか」


 さすがに本来の所有者だけあって、使い方には精通しているらしい。

 

「クトリール様も魔法を覚えたら、是非試してみて下さい」

「うん。覚えたらね。でも、どうやったら覚えられるの?」

「普通の魔法なら魔力を操れば、けっこう簡単に使えますよ。まずはアナライズ/カリキュレートで魔力を見て下さい。設定で魔力の感知レベルを上げれば分かりやすいですよ」

「そんな機能まであったんだ……」


 やっぱりプロネアの言うとおり、俺は全然スキルを使いこなせてないな。

 少しだけ反省した。

 これからは、まじめに訓練に取り掛かかろう。


 とりあえずアナライズ/カリキュレート……

 長いから略してアリゼレートでいいか。


 俺はアリゼレートを起動することにした。



 ――アリゼレート、起動。


 

 そしてメニューを呼び出し、スキル詳細をタッチする。

 たぶんここらへんの項目で操作するんだろうな。

 おっ、あったぞ。


 魔力感知レベル(通常)/0

 魔力感知レベル(戦闘時)/自動制御


 ふむ、ここで設定を上げればいいのか。

 俺は魔力感知レベル(通常)の設定を操作する。

 そして数回叩いてレベルを3にしてみた。


 そこで顔を上げると、

 プロネアの周囲にうっすら何か霞んでいるものが見えた。

 

「あっ、たぶんこれが魔力なんだ」

「見えましたか。あんまり設定を上げ過ぎると、気分が悪くなるので注意して下さいね」

「大丈夫。まだ、はっきりとはしないから」


 もう少し設定を変えてみようかな。

 そうしてメニューを触ろうとしたとき――

 プロネアが緊迫した声で呼びかけてくる。



「クトリール様、下がって下さい!」



 さっきまでの穏やかだった雰囲気から、急に気配が変わる。

 刹那――

 地面が揺れ出した。

 これは……


「クトリール様、早くこちらにっ!!」


 様子をうかがっていると、プロネアに襟首をつかまれた。

 そのまま後ろに引っ張られていく。


「ちょっとプロネア、何だよ」

「いいから早く逃げましょう。大型モンスターですっ!」

「えぇーっ!」


 驚いてる間にも、次第に地面が地割れを起こし始めた。

 どんどん足元が崩れている。

 プロネアは俺を掴んだまま、そんな足場をどんどん駆け抜けていく。

 そして揺れがおさまったところで立ち止まった。


「クトリール様、あれがこの世界の大型モンスターですよ」


 俺はそいつの姿を見る。

 大きすぎて、とても戦う気が起きない。

 まるで大型船や城と対峙してるようなものだった。

 個人で相手にするようなモンスターじゃない。

 

「プロネア。もっと遠くまで逃げようよ」

「いいえ、倒します。いずれクトリール様もこのレベルの戦いをしてもらいますので、よく見ていて下さい。あの程度のモンスターは雑魚ですから」


 そう言うと、彼女は詠唱を始める。



――「星を育みし守り手よ、生まれたる炎をここに宿し、原初を刻め、シェプルムフラマ!」



 その瞬間――

 空にまで届きそうな火炎の竜巻が、いくつも立ち上がった。

 まるで平原を炎で埋めつくような勢いだ。

 そしてそれらは大型モンスターに襲いかかっていく。


「プロネア、これじゃ俺達まで炎に巻き込まれしまいそう!」

「大丈夫ですよ、クトリール様」


 俺がその魔法に焦っていると、彼女は落ちつくように宥めてくる。

 

「精霊魔法は敵ではない相手にダメージを与えません。ですから、クトリール様や周囲の自然が被害を受けることはないんです」


 ん、言われてみれば……

 これだけの炎に囲まれていても熱くない。

 プロネアの話が本当なら、実際に触れても火傷はしないのだろう。

 もちろん試したくはないけど。

 轟々と燃え盛る炎の中で、大型モンスターの影が見える。

 もし熱かったら、人間なんて一瞬で炭になりそう……

 その様子を見ていると、炎が揺らめく。

 

「ようやく敵を倒せたみたいですね。意外と時間がかかりました」


 彼女はそう言って、魔法をおさめた。

 そこには焼け焦げたモンスターが倒れている。

 ただ、本当に周囲の草木は全く燃えてはいなかった。


「精霊魔法って、もしかして凄い魔法なの?」

「クトリール様のワールドフレームに比べると、全然大したことはありませんよ。それよりもほら、あちらを見て下さい。あそこに見えるのがダンジョン都市、ディナエルスです。走ったり地形が変わったりで、いつの間にか、もう街が見える場所にまで来ていたみたいです」


 確かに見える。

 もうこの平原を下れば、すぐ着くような距離だ。


「しかしまるで戦争でもしてるように、守りを固めてるように思えるが」

「これだけ危険なモンスターがいる世界ですからね。無防備では潰れるだけです」

「防衛コストが高そうな世界だな」

「そうですね。コストは高いでしょう。ですがモンスターや敵国に滅ぼされるより、税金で苦しむ方がいいと思いませんか。例え貴族に虐げられようとも、生きていける環境は用意されてるのですから」

「俺はそんな生活も嫌だけど……」


 俺たちはそう話しながら、街の入口を目指して行った。

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