特訓編 4
午前の訓練を終えて、俺たちは食堂にいた。
ちょうど昼食を食べ終わったところだ。
「ごちそうさま。やっぱり、プロネアの手料理は格別においしかったよ」
「えへへ、お料理アプリのおかげですよ」
「そのアプリのデータって、俺もインストールすることができるの?」
「えっ、無理ですよ」
いくらワールドフレームでも、それは出来ないらしい。
「クトリール様が習得できるのは、ユニークスキルだけです」
「それって元々は、フェンネスのゲームデータなんだっけ」
「はい、その通りです。私の持っていたユニークスキル、アナライズ/カリキュレートやアイテムボックスは、フェンネスのゲームデータが元になって生まれたスキルです。ですが同じ電子情報と言えども、お料理アプリはそうではありません」
「ゲームデータと似てても、別物ってことか」
へー。
やっぱり何でもコピーして、習得できるわけじゃないんだな。
「それと私が使ってる魔法も、コピーデータは作れませんよ」
「えっ。それってつまり、プロネアの魔法はゲーム由来じゃないってこと」
「はい。実はこの世界に来てから覚えました」
そっか……
どおりで聞いたことのない詠唱だと思った。
「ですからクトリール様も魔法を使いたかったら、頑張って訓練を重ねるか、魔法系のユニークスキルを持った存在を探すかのどちらかですね」
「存在って、それは人とは限らないってこと?」
「はい。モンスターや植物、あるいは無機物もあり得ます」
それは面白そうかも。
元の世界に帰る方法へ、繋がる可能性もあるしな。
そんなことを考えていると、プロネアが食器を重ね始めた。
「それはともかく、そろそろ出かけましょうか」
「うーん、お腹いっぱいだし、やっぱり今日はもうお休みしたいかな」
「ダメですよ。まだ半日しか訓練してないじゃないですか」
「もう十分頑張ったと思うんだけど……」
「はぁ、仕方ないですね。それでは屋敷で私との組手にしますか?」
「よし。ギルドに行く準備をしよう」
プロネアとの組手は、二度とやりたくない。
アナライズ/カリキュレートを習得した今だから分かる。
彼女は俺の残り体力を見て、確実にギリギリまで追い込んでいたのだ。
またあれをやるくらいなら、ギルドに行く方がマシだった。
「やりました、クトリール様が行く気になってくれましたよ!」
プロネアは笑顔になって喜んだ。
しかしはっきりと言う。
俺は決して乗り気なんかではないと。




