表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/428

第九十六話 名古屋大田一家

「やあ、お嬢さん。美しいねえ。俺の女にならねーかい」


 俺は人質になっている女性と、髪をつかんでいる男の間に体を入れて、拳銃を持っている男の腕をひねり上げた。

 女性は、少し目が吊り上がっているけど、美人ぎみの女性だ。

 まあミサを百点とすると、坂本さんは九十九点、あずさは二百点、この人は七十三点ぐらいだ。


 俺は、女性に話しを合わせるように、ウインクをバシバシした。

 もちろん顔は、目一杯、目を見開いて渋く格好良く見えるようにした。

 女性は頬を赤くして、コクンと頷いた。


「ふふふ、今からこの女は俺の女だ! きたねー手は離してもらおうか」


「あーやっちゃった」


 あずさが小さな声でつぶやいた。

 何だよやっちゃったって。


「馬鹿かてめーは、状況を考えろ」


 竹田と手下が俺にかかってくる。


「うぎゃーーー!!!」


 五人が崩れ落ちた。

 うん、弱い。


「腕がーーっ!!」


 拳銃を持つ手をひねり上げ、折っておいた。

 ついでに拳銃は取り上げた。

 取り上げた拳銃は榎本と手下の前に投げた。


「このやろーー!!」


「おい、おい。ほどほどにな!!」


 榎本達が、えらい勢いで、竹田達を痛めつける。

 ポカスカ殴ったり、蹴ったりしている。だが、表面は傷ついているが、気絶するほどではない。

 ゲンなら、一撃で失神させているだろう。

 普通の人間の攻撃力はこんなものなのだろう。


「おい、竹田! 俺達の一家はどうなったんだ」


「ひゃあーーはっはっはーー、皆殺しにしたよ。女以外はガキも全員皆殺しだーーーーー!!!!」


 竹田は、死を覚悟したのか、口から大量の血を吐きながら笑い飛ばした。

 榎本が銃口を向けて引き金を引こうとした。

 俺は、その手を押さえつけた。

 そして、竹田とその配下に手かせと足かせをつけた。


「あずき、こいつら全員のけがを治すことは出来るか」


「はい、出来ます」


「じゃあ、頼む」


 俺は、助けた女性に視線を移すと、この人も結構な青たんが体中に出来ている。

 その視線を見て、あずさは女性にもけがを治す魔法をかけた。


「ほら、ういろうだ。食え」


 俺はポケットから黒い固まりを出した。


「てっ、てめーーっ、なめているのかーーー!! これはういろうじゃねえ。ようかんだーーーーー!!!!」


 竹田が、すげーー剣幕で怒っている。

 し、しまったー。また間違えた。

 榎本達と、あずさが噴き出している。


「お嬢さんも食べるか? く、栗ようかんだ」


「はい、いただきます」


 顔に似合わず可愛い声だ。

 それを聞いて、榎本達がまた噴き出した。


「なあ、竹田。皆殺しなんてひでえ事を何でするんだ」


「しゃーねえじゃねえか、もう食い物がねえ。全員が餓死するより少しでも仲間が生きられる方がいい」


 今の都市はまるで砂漠だ。

 立派な建築物はあるが食べ物が無い。

 それでも、都市にしがみついてしまった人間の末路なのかもしれない。

 今は東京も人が住めない街になっている。

 これはそんな中で、必死に生きようとした人達の結果なのか。


「なあ、榎本さん、どうしてもこいつらを許せないのか」


「許せるわけが無い!」


「えーのもーとーー!!!」


 女性が、口からようかんを飛ばしながら叫んだ。

 榎本の顔に黒いつぶつぶが張り付いた。


「は、はい。姐さん」


「うちの亭主が言いたい事があるようだ。だまって聞くんだよ」


 姐さんが、俺の方を見た。

 今度は、姐さんがウインクをバシバシしている。


「聞いてくれ、俺から見れば、榎本も竹田も全部ひっくるめて日本人だ。このままでは日本が滅んでしまう。一人の命も無駄にしたくねえ」


「そ、そんな、きれい事を言って! 食いもんはどうするんだーー!!! 食い物が無ければ始まらねえ!」


 榎本が、激怒しているようだ。

 俺の理想論が気にくわなかった様だ。

 俺はポケットに手を入れると、ステンレス製の机を出した。


「あずき、食べ物を机一杯に並べてくれ」


 あずさは机の上に収納している食べ物を、わざわざ俺のポケットに手を入れて出していく。

 俺も、あずさが出す隙間を縫って、収納している食べ物を並べる。

 それを見ている、全員の口からよだれが垂れはじめた。

 人間の口から、これ程よだれが出るのを見るのは初めてだ。


「どうぞ」


 あずさが、可愛い声ですすめた。

 最早、敵も味方も無い、ガツガツ食べ始めた。

 あずさもすかさず、食べている。


「うめーーーっ!!!」


 全員が、食べながら泣いている。

 俺は、コップを出すと水をついでそれぞれの前に置いてやった。


「あんた達はいったい何者なんだ」


「俺は、駿河の大田大商店の大田大だ。こっちはその娘のあずきだ。食糧は俺達が何とかする。矛を収めてはくれないだろうか」


「くっ、それでも、できねえ。親の敵だ」


 榎本は、心が揺れているようだ。

 だが、親分を殺された敵を許す事が引っかかっているようだ。


「あーーはっはっはっ!! すごい男だねえあたしの亭主わ!! 榎本! 一家の名前が今から名古屋大田一家に替わった。親の言う事は白でも黒になる世界だ。あんた、榎本に言ってやりな!!」


 姐さんが俺を見て、ばしばしウインクしている。

 だ、大丈夫なのだろうか? 深みにはまっているような気がする。


「榎本!!」


「だ、だめだ、あんたからは盃を受けてねえ。認められねえ」


「良く言うぜ。そんだけ俺の出した食いもん食っておいてよおー!!」


「……」


 榎本は下を向いた。

 姐さんが俺の腕にしがみついてきた。


「姐さん、もう演技はいいですよ」


「ふふふ、姐さんじゃ無いよ。凛と呼んでおくれ!」


「あーーあ」


 あずさがため息をついた。

最後までお読み頂きありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「頑張って!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。

面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。

何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あずさの点数には納得しました(๑´ω`ノノ゛✧ あずさ推しです!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ