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第百話 ヒーローコスチュームの作成

 静かになった名古屋城の中庭で、俺は変態研究を始めることにした。

 中庭の中央では女性陣が、凛の指示で昼食の後片付けをしているので、俺はその邪魔にならないように隅っこで石に腰掛けた。

 アダマンタイト製の護身用ヒーローコスチュームの作成を始めたのだ。

 対象は、ヒマリと愛美ちゃん、そしてその護衛の坂本さんと古賀さんだ。


 この四人は、俺の中では最重要人物なのだが、いつも一緒には、いられない。

 護身用のコスチュームで自分の身は、自分で守れるようになって欲しいと思っているのだ。

 まずは、考えているデザインで試作品を作ってみる。

 アダマンタイト製なので、やはり色が黒になる。黒で良いデザインを考えた。

 目の前には、くノ一に似た衣装に、ヘルメットという感じの物が出来上がった。

 さて、それでは魔力を込めて命を吹き込むとしよう。


 金色の魔力の模様が浮かび上がる。


「うふふ、かっこいい」


 あずさが俺の目の前にしゃがみ込み、コスチュームを見てうっとりしている。

 おーーい、セーラー服の短いスカートの中身が丸見えだぞーー。

 ああ、水着だから良いのか。


「ちょっと試着をしてくれないか」


「え、良いの?」


 俺は、コクコクうなずいた。


「と、その前に、このコスチュームは体にぴったりになる。服は脱いでくれ」


「えっ!?」


 あずさが、恥ずかしそうにしている。だが、微妙に嬉しそうだ。


「違うぞー。全部じゃ無い。水着は着たままで良い」


 なんで、この娘は裸だと思うんだよー。

 あずさはセーラー服を脱いで水着姿になった。


「オイサスト! シュヴァイン!!」


 コスチュームが糸のようになり、体をおおっていく、そしてさっきのくノ一姿になった。


「うむ、上出来だー」


「かがみー、かがみーー!」


 あずさは自分の姿が見たくて鏡を探している。

 女性が少し大きめの鏡を持って来てくれた。


「わああ、かっこいい! あれ? 服が無い」


「ふふふ、このコスチュームには、背中に小さな収納ボックスがつけてある。変身の時にそこに自動的に収納されるのさ。そして、その収納ボックスにミスリルの短刀がセットされている。この短刀に空気魔法と、温度魔法がセットしてある」


「なるほどー、そうすれば内部の温度が一定で、水中でも大丈夫になるわけね」


「それだけじゃ無い。真空のかまいたちが起こせて、手裏剣のように攻撃も出来る」


「すごーい、至れり尽くせりね」


「少し身体能力の補正も入るから、動きも軽くなる」


「本当だーー!!」


 あずさが飛び跳ねている。


「もう良いだろう。一度、変身を解除してくれ」


「はい!!、アプザーゲ」


 あずさが言い終わると、あずさのセーラー服が目の前に落ち、黒い糸があずさの体からシュルシュルと剥がれていく。

 そして、黒い動物の形になる。


「なにこれーー!!! かわいいーーー!!!」


 かわいい黒猫になった。

 コスチュームを持って歩くわけにも行かないだろうから、動物にして自分で動いてもらう事にしたのだ。


「どうかな。一応腹の真ん中が空胴になっていて、手荷物も入れる事が出来る」


「ありがとうございます」


「いやいや、お前の分は無いぞ。これはヒマリと愛美ちゃんと、坂本さん、古賀さんのために作ったんだ」


「えーーーっ」


「えー、って。お前は強いからいらないだろう」




「勝手に入ってくるんじゃ無いよ! 何者だい?」


 凛が門を勝手に入ってきた、強面の男達の前で両手を広げて叫んでいる。

 男達は三十人以上いる。


「俺は東一家の、東だーーー!!」


「ちっ、留守を狙われたか。あずさ! 皆を避難させてくれ」


「はい。オイサスト! シュヴァイン!!」


 あーー、気に入ったのかコスチュームを装着している。


「大田だ。いったい何の用だ」


 俺は、凛と男達の間に入った。

 男達は、こえー顔をしてジロジロ俺を見てくる。


「あ、あんたが大田さんか? 確かにこれでもかって言うほどの豚顔だ」


 うるせーよ。これでもかって言うほどの豚顔ってどんな顔だよ。


「やる気なのか」


「いや、待ってくれ。気を悪くしたなら謝る。話しを聞いてくれ」


「何だ。言ってみろ」


「こいつらに見覚えはあるか」


 東がスポーツバッグを持った男達を指さした。


「あーー、そいつらは、もと古屋一家の者だ。今は一家とは全くかんけーねえ、ただのかたぎの人だ。何か間違いがあったのなら、責任は俺にある、そいつらは助けてやってくれ無いか」


「ふふふ、聞いていた通りだな。こいつらは、東一家の潜入部隊の者だ。古屋一家の内部情報を探っている俺の手下だ」


「なっ、なんだって! まあ、といっても古屋は死んじまったし、どうでもいい。用が済んだのなら帰ってくれ」


「ま、まあまて、最後まで聞いてくれ! こいつらから、あんたの事は聞いた」


「わかったから、帰ってくれ。俺はこれでも忙しいんだよ」


「あーーもう、おいてめーら、全員土下座だーーー」


 東一家が俺の前でひざまずいた。


「な、なんのまねだ」


「あんたに命を預けたい。東一家の総意だ。どうか受け止めてもらえねえだろうか」


 スポーツバッグを持って逃げた者が、俺の事を話したのだろう、降伏してきたようだ。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


 すごい叫び声と共に榎本と加藤が門から飛び込んできた。

 すごいタイミングだ。

 名古屋大田家の危機を感じ取って帰って来たのだろうか?

最後までお読み頂きありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] えー!! あずさちゃんにも着せといてーーー(´;ω;`)笑
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