表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/50

番外編:フィンの一日

フィン・ガルシアの朝は早い。



6時︰起床・鍛錬


「フッ…!ハァッ…!」

起きてすぐに着替えを済ませて顔を洗い、庭にて素振りをする。十年以上欠かしたことのない日課だった。

夏盛りのこの時期は朝でも暑く、動いていれば当然汗が溢れ落ちる。



7時:シャワー・朝食


汗を洗い流し、朝食を摂る。今日のメインは厚切りベーコンだった。それにパンとスープとサラダとその他諸々が付いて来る。消費の激しい騎士にはこれくらいの食事量がないと昼まで持たない。



8時:出勤


「おはよーさん!」

「おはよう」


テオは普段通り冷ややかだ。これがセナ嬢が関わるだけでああもポンコツに仕上がるんだから面白いことこの上ない。

今日も見れっかなぁ。



9時:戦闘訓練


走り込みとストレッチを入念にしてから剣を用いての訓練が始まる。


今日は模擬戦だ。テオはセナ嬢に教えてもらった魔法を織り交ぜる戦闘スタイルに変わったので、すごく対応しづらい。帰還した当初は腕が鈍っていたが、今では勘取り戻していて隙が全くない。

俺も教えてもらおうかね?



11時:着替えを済ませ、書類仕事


汗臭いまま過ごすと部屋が地獄と化す。メイドさん達に嫌われて遠巻きにされてモテなくなる。独身にはキツイ。


昨年からテオが室内を魔法で冷やすから仕事効率が上がっている。が、他部署の人間が居座ろうとするのは頂けない。仕事しろ。俺らは快適空間で仕事するがな!



12時:昼食


今日の俺はツイてるぜ!


「フィンさんこんにちは」

「セナ嬢も昼飯?」

「はい。御一緒にどうですか?」


よっしゃー!セナ嬢の飯は何でもうまいから嬉しいわ。


「セナ駄目だ。もったいない」


テオがいつもの如く阻止して来る。

まったく、いつのまに器が浅くなったんだか。どう考えても食べきれないクセによ。

俺に対抗心燃やしても意味ないってそろそろ解ってくれよ。


「俺も食いたいんだよ!いいよな、セナ嬢?」

「はい。沢山ありますから」

「ほらな!」


毎度毎度悔しそうに顔を歪めるテオ。それも含めてこの食事が楽しみだ。

毎日ある訳じゃないが週二、三くらいの頻度でご相伴に与っている。


「うんまあ!」


肉厚なカツが挟まれたサンドウィッチ。

サクサクの衣で揚げたカツも、これほどにボリュームのあるサンドウィッチも、この複雑で病みつきになるソースもなかった。テオが胃袋を掴まれたのも納得の味だ。


うますぎ。疲れた身体に沁みる~。


「良かったです。フィンさんはいいリアクションしますね」

「うまいからな!」

「…セナ。今日もうまい」

「ホント?良かった。テオの好きなタマゴフィリングもあるよ?」

「わかった。あとで頂こう」


一時はどうなるかと思ったが、最近では婚約者として順調にうまくいっているようだ。

良かった良かった。


テオの好物に手を伸ばしたら、叩き落とされて睨まれた。


もっと寛容になれよ!お前はほぼ毎日食ってるだろうが!



2時:合同訓練


昼の戦闘訓練は合同になる事が多い。今日は筆頭魔法士達との連携訓練だった。

おっ?テオがセナ嬢と話してんな。これは面白いもんが観えそうだ!


「セナ嬢も一緒なんだな!」

「はい。よろしくお願いします」

「よろしく!」


挨拶もそこそこに二人一組に分けられ、対戦形式で実践的な経験を積んでいく。

問題があるとするなら。


「お前とセナ嬢の組み合わせじゃ誰も勝てなくね?」

「だが、私がセナ以外と組むことはない」

「訓練にならねー」

「事実を言ったまでだ」


まあ、テオも魔法を多少使えるし?ヘタな魔法士は却って邪魔になるのも分からんでもない。

しかし、だ。


「相手になんねー!」


戦力が偏り過ぎだろうが。セナ嬢だって苦笑いしてんぞ!

指摘しても無駄な事は経験済みだが、仕事ってことを勘定に入れてくれ。



5時:書類仕事


一日の記録と午前中に済ませられなかった書類を捌いていく。

騎士に書類やらせるってどうなんだ?適材適所ってことでかわいい事務員ちゃんとか採用されないねぇかな?



6時:業務終了・帰宅


テオはこの後セナ嬢とディナーに行く約束があるらしい。お熱い事で。

馬車留まで道が同じなため一緒に向かう。テオは彼女の姿を見つけた途端にバッ!と駆けだした。


最近。尻尾をぶんぶん振る忠犬に見えて来て困る。



7時:帰宅


「ただいま~。エリー」


返事がない。何処に行ったのか。

片っ苦しい騎士服を脱いでラフな格好に着替える。すでに食事の準備が整っているためはやくしないと。


「お、エリー」

「ナア~ン」


チェストの上から華麗に降りて来たのは白猫のエリザベス。俺の愛しのエリーだった。


艶々の毛並みを撫でてやればコロンと仰向けになってもっとなでろと催促する。この可愛い奴め!

ひとしきり撫でた後に抱き上げて共にダイニングルームへ向かう。


今日も今日とて執事に呆れられ、メイドには微笑ましげに見つめられる。

それでも、エリーの引力には逆らえないのだ。



8時:夕食・鍛錬


夕食は赤身のステーキ三枚。そこにパン、サラダ、スープ、副菜にデザートまで並ぶ。朝食と比較すると量は少なめだ。


そして、夕食後はまた鍛錬。

いつまでテオが騎士団に居るか分からない。籍を入れたら退団する者が多い中、テオの退団については今の所話題に挙がっていない。


セナ嬢が精霊契約者だからだとは思うが。

今のままであれば、セナ嬢の護衛をテオが担うことができる。新しく彼女の傍に男の騎士が侍るのが嫌なんだろう。


嫉妬深くてちょっと引くわぁ…。



9時半:入浴・報告を受ける


俺が独身じゃなければ邸内の采配をしなくて済むんだが。なかなか大変だ。


あ~!器量の良い伴侶欲しいぃ~!!!



11時:就寝


毎日、エリーが俺のベッドに潜り込んでくる。冬は良いが、この時期は流石に暑苦しい。


でも、可愛いんだよな~。


「おやすみ。エリー」

「ンアーン」


すぐ隣で身体を丸めたエリー。

もう、エリーが居ればいいや。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ