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15. マジで言ってる?(フィン視点)

応接室から退出するセナという女性を見送った後、第三近衛騎士団に与えられている執務室へ戻った。




セナ嬢は今までに会ったどの女性とも違った。


まず、テオを見ても顔を赤らめなかった。熱の籠った視線も甘ったるい猫なで声もない。本当に自然体で接していた。



次に褒美。


貴族に何か欲しい物を聞かれたら普通は高価なものを強請るものだ。なのに伝言。しかも完全にテオが悪い。


高位貴族である公爵家の次男が嗜む酒ってことは相当品質が良い物だから平民である彼女にとっては金銭的負担が大きいことだろう。



最後に地位。


筆頭魔法士とは魔法士なら誰もが憧れる職業だ。

仕事の幅も広く、給金も高いため筆頭魔法士に選ばれると将来安泰と謂われているほどだ。それを嫌がるなんて今まで聞いたことがない。


そんな彼女だからこそ治療のためとはいえ、テオがセナ嬢と同棲できたのだろう。






書類確認をしているとテオが戻ってきた。きっと魔法省にセナ嬢の推薦をしてきたことだろう。


「お疲れー。魔法省の連中は何て?」

「一度入省試験をしたいと言っていた」

「そうかー。まあ、受かるだろうな」

「当たり前だ」


テオが自信満々に答えながら自身の席に腰を下ろし、書類の処理を始めた。


彼女のところから帰ってきてからいい方向に変化している。そのおかげで団員達の士気も向上しているし、仕事効率も上がっている。



その彼女からの伝言をしっかりとこいつに伝えないとな。


「そういえば、セナ嬢から聞いたぞ?今も家に通ってるらしいな!」

「ああ。彼女の手料理は本当にうまい」

「へぇーそうなのか!俺も食べてみたいなぁ!」

「セナに聞いてみたらいいんじゃないか?」


貴族の俺らが言ったら作らざるを得ないだろうが…!そこんとこ考えてないのか…?…とりあえず話を進めよう。


「次会った時に聞いてみるわ」

「そうするといい」

「もし許可が出たら茶菓子のひとつも持って行かないとなー。なあ、セナ嬢って何が好物だ?」

「…必要か?」

「いや要るだろ、普通。他家の茶会に参加するときは必ず持っていくだろ?それと一緒だ」

「…なるほど」


彼女に聞いた通り全然だめじゃねぇか!マジかー…。


貴族としての礼儀作法は完璧なんだが、平民の常識は分からないってことなのか…?



テオってこんな奴だったか?


「で、何が好きなんだ?彼女」

「そうだな…菓子なら甘さが控えめな物だな」

「なるほどなー。てか、テオが女の好み把握してるとか驚きだわ!遅すぎる春でも来たか?」


ついでに冗談で恋人関係も示唆しておく。このままの関係が続けば入省後に必ずテオに惚れている令嬢からの妬みが彼女の方に向くからだ。



それに気が付いていればいいが。



「!よく分かったな。」







は…?




…マジで言ってる?あのテオが?


慌ててそちらに視線を向けると書類から手を止め、頬をほんのりと赤らめて微笑んでいるテオがいた。


「え、マジでセナ嬢に惚れてんの」

「そうだが?分かっていて聞いたんじゃないのか?」

「おま、…はあ?!?!」



嘘だろ?!あのテオが?!?!?!


「付き合ってんのかよ…!ならさっさと言えよ!」

「いや、交際はしていない」

「はあ…?何でだよ…」

「…振られた」

「…今何て?」

「振られた。二回交際を申し込んで二回とも拒否された」

「…んぐ…アハハッハハハハッハハ!!!!」

「笑うな!」

「ハハハハハッハハ!!おっかしいーーー!!!」


マジか!!!この令嬢達にモテ過ぎて女性嫌いになるようなテオが惚れた女に振られるって…!!!面白過ぎるだろ!!!


腹いってぇーーー!!!


でもこいつはいい奴だし、一応俺の幼馴染で友人だからな。

このフィン様が手を貸してやろう!


「ハー!涙出てきたわ!…で?」

「何なのだ全く…」

「いや、セナ嬢を落とすために何してんだって聞いてんだよ。贈り物とか何渡したんだ?」

「…何もしてない」

「は?贈り物くらいはしたんだろ?」

「いや、してないな」

「一度も?」

「ないな」



そりゃあ、惚れるも何もないだろうが…!!!

ヤベェ…今までがモテ過ぎて惚れられて当然と勘違い起こしてないか…?ないよな流石に!


それでも恋愛の駆け引きとか一切分かってねぇ奴だぞ、これ…!!!このままだと確実にまた振られる…!


「それはダメだろうが!何か贈れ!!!今すぐ!」

「贈る必要があるか?」

「あるだろうが!お前はセナ嬢にだけ貢がせるつもりか!」

「?別にセナに貢がせてはいないが?」


マジでこいつ何言ってんの?!?!頭おかしいだろ?!?!


婚約者に贈り物をするのも、外食したら払うのも理解できてるはずなのになんでそんな判断になんだよ!

マジで頭痛くなってきたんだが?


「…お前な、セナ嬢の家に行って飯食わせてもらってるんだよな?」

「ああ」

「酒も飲ませてもらってるんだよな?!」

「ああ」

「菓子も食わせてもらってるんだよな?!?!」

「ああ」

「…しっかり貢がせてるじゃねぇか!!!」


これでなんで貢がせてないと言い切れるんだ?!?!お前は彼女に助けてもらった側だろ!!!好かれたいなら好かれる努力が必要だろうが!!!


「いやこれはだな、」

「言い訳は聞かねぇ!!!いいからさっさと何か買ってこい!!!」

「ああ…。分かった。」

「早く行け!!!」

「…フィン」

「何だよ?」

「何を贈ればいい。」

「そこからかよ!!!!!」




恋愛下手とか恋愛初心者ってレベルじゃねぇぞ、これ…どうしたらいいか誰か教えてやってくれ!

読んでいただきありがとうございます!

第二章完結です。


「面白いなぁ!」

「続きが気になる!」

「早く投稿を!」


と思ったら!



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