頼みの綱
場所は変わり、俺達が泊まっている宿屋のオリビアの部屋。
「うーん、紫焔のドラゴンか……」
俺達と女神が薬草を採取しに森の中へ入っていた時、空中から突然にドラゴンが現れ、なんやかんやで不思議にも帰って行った経緯をオリビアに説明したところ、帰ってきた言葉がこれであった。
ちなみにオリビアはヘローワーク(ギルド)から薬草採取の森に向かう前に急用があったのを思い出して街の中に残っていた。
決して作者が一緒に薬草採取に行っていたのを忘れていたわけではない。ちょっと、おちょこちょいなだけなのだ。てへぺろー。
「どうだ? オリビア。
英雄と呼ばれていたお前なら、何で突然にドラゴンが現れて立ち去って行ったのか分かるんじゃないのか?」
「ドラゴン……。
残念ながら私もドラゴンを見たのは人生で二度目なんだ。
しかも、その一度目というのも遠い山岳地帯を高く飛行していたのを見ただけでな。それを見るまでは伝説だけで、もう絶滅した生物だと思っていたよ。
一説にはドラゴンは、この世界の生態系の頂点でその絶対数は極端に少ないらしい。
また、人間たちを酷く嫌っていて人前に出てくることは絶対にないと言われている。
それが、こんな人里まで転移魔法で現れるなんて、よっぽどのことがあったのだろう。
だが、それが何なのかというと……、うーん(悩み)」
俺達三人組の中でこの世界に一番詳しいオリビアが答えを持っていないことで、ますます疑問は深まった。
しばらくの間、部屋の中の誰も話そうとしなかった。
建物の外では、ドラゴンが出たこの街を去るために我先に急ぐ馬車の音と、それを急き立てる怒号が鳴り響いていた。
そんな中、ふと男が話し始めた。
「もしかしたら……」
今後どうすれば良いのか分からず何も言い出せなかった俺達三人組の視線がその男に集中した。
「ボクの通っていた小学校では学校の七不思議というのがあってね。
その中に『何でも答えてくれるこっくりさん』という心霊憑依の方法が語り継がれていたんだ。
正式な方法にのっとって儀式を行わなければ最悪、そのこっくりさんに呪われてしまうという危険な方法なんだけどね。
だけどもしかしかしたら、あるいは……」
そこまで言って男は、難しい顔をしてまた下を向いてしまった。その表情には、自分が言ってはいけない事を言ってしまったのではないかという後悔が滲んでいた。
その発言にその場の雰囲気が再び沈んだ気がした。
なぜならば皆、こっくりさんを知っていて、またそれがどれほど危険な行為であるのかも分かっていたからだ。
こっくりさんを呼び出している最中、誰かが十円玉から指を離してしまったら一体どうなってしまうのか……。
だが、それだけのリスクを取るしかもう方法は残ってないのだろうか?
皆、その怖ろしさに結論までの考えが鈍る。
が、その時、気付いたオリビアが指摘した。
「なあ、おいっ!
なんでここに裏切り者の"ドザエもん”(その男)がいるんだ?」




