結婚初夜1
"スライムの涙”で大金をせしめた俺達は、今夜は馬車の荷台ではなく、ベッドのある宿屋に泊まることにした。
黒いネズミに紹介されたのは、ヘローワークに一番近い”ドラゴン・クエン”(←略してはならぬ)という名の宿屋だった。
「すみませーん!」
宿屋の玄関を入って、ロビーから奥に向かい誰かいないかと声を掛けた。
「はいはーい」
奥から出てきたのは、太り気味のドットの粗い宿屋の主人だった。(データ容量64Kbit)
「いらっしゃいませ。ゆうべはお楽しみでしたね」
「いきなりだな! おいっ! 今、来たばっかりだよ!」
「今日は何をしにこちらへ?」
「いやいや、ここ宿屋だよねえ?
逆に俺達が何しに来たと思ったのか聞きたいんですけど」
「うーん、確定申告?」
「全然、意味が分かんないからっ!!! 誰もついて行けないから、止めてくれよっ!!! そうゆうのっ!!!
何なのこの宿屋っ?!!!」
「確定申告も出来る、官民一体型の新しいタイプの宿屋ですけど」
「ああ、そう。
そうなんだ。
確定申告できちゃうんだね。
それはどうも申し訳ありませんでした。
俺の勉強不足です。
すみません」
「いえいえ、こちらこそです。
確定申告は、個人情報を盗む為にやってるようなものですから。
気にしないでください」
「お――――いっ!!! 官庁――――っ!!!
一番、なっちゃいけない人と一体になってるよっ!!!
この責任問題は多分、国会まで行くと思うっ!!!」
「では、もしかしてお泊りにいらしたとか?」
「ああ、そうだよ。もしかしても他でもないけど、何日か宿泊させて欲しいんだよ」
「そうですよね。
本当は、始めから分かってたんです。
うちは宿屋ですからね。
……。
『だが、断わるっ!!!』」
「もう、何なのっ?! この宿屋っ!!!
全然、話が通じないんですけどっ!!!」
俺はここでやっと誰に紹介してもらったのかを思い出した。




