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深刻な巨人

 女神の素っ頓狂な返答に、豪気な顔の目だけが点になるのを見て俺は、すかさず冗談だと否定した。

 そして、ここに来たのは偶然であり、転移魔法の失敗により誤って砂漠の真ん中へ出現したということ。三日三晩かけて砂漠を越え、森を抜けてここまで辿り着いたことなどを話した。


「それは、災難でしたな。あの砂漠を三日間も彷徨っていたとはよくご無事で。

 さぞ、空腹になっているでしょう。

 今すぐに何か用意させますから、少々お待ちを」


 そう言うとザンギエフは、部屋から出ていってしまった。


 部屋に残ったのは、俺達ソウルリンク三人組とザンギエフに使えていた兵士が二人。

 俺は、手拭い一枚のオリビアに聞いてみた。


「あのザンギエフというのは、どういう男なんだ?

 お前に対してとりあえずは好意的なようだが」


「さあ、知らんな。

 確かに何十年か前に顔は見たことがあるような気がするが、その中身まではわからん。

 帝國の近衛騎士であったならそれなりに腕は立つだろう」


 素っ気なく答えたオリビアに俺は、それ以上の詮索は控えた。

 これから何かしてくれようとしてくれている人に疑いを持つのは失礼だと思ったからだ。


 しばらくして、ザンギエフと共にメイド服を着た女性が数名、部屋の中に入って来た。

 メイドは、その手に色々なものを持っていて俺達の前には、あっという間に豪華な料理と食器が並んだ。


「急ぎで用意させたので物足りないかもしれませんが。

 先ずは、()()()()水から飲んで下さい」


 ザンギエフがそう言うと、そこに水差しを持った可愛い少女のメイドがこちらに来た。

 まだ慣れていないのか、緊張して手が少し震えているのが分かる。

 俺達三人は、用意されたグラスを持ち、その少女にそれぞれ水を注いでもらう。

 その時、グラスと震える水差しが当たり、カチカチと音が鳴った。


 俺は、正直言ってその注いでいる時間さえ待ち遠しい。

 砂漠を越えて森を抜けて、純粋な水が飲めるのはもう、三日ぶり以上であったからだ。

 最後に女神のグラスを水が満たされるのを見た後、俺は周りに目配せし、それを一気に飲もうと口に持ってきた瞬間。


「お待ちください」


 突然、女神がそれを制止した。

 すると、女神はその止めた水をくいっと一口、自分のグラスから飲み込む。


「うん、やっぱり()ですね」


 女神がそう言い終わるやいなや、黒光りするフルアーマーを装備した兵士が十数名、部屋の中に駆け込み、抜刀した。



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