癒しの女神
「あれって、やっぱり……」
俺がそう言い終わる前に、女神は答えた。
「ええ、あれが『黒炎の魔神』の力に間違いないです」
女神と俺は、ミミズの飛び散る肉片が治まるのを待って、その中心部分に向かった。
黒炎の爆心地付近まで来ると、爆発跡として砂地と死んだ巨大ミミズでクレーターのような窪地になっているのがわかった。
さらに近寄ると、そのクレーターの中心部に裸のオリビアがうつ伏せに倒れているのが見える。
女神はオリビアの傍らに立つと、その顔をかが見込んだ。
「うーん、息はしていますが完全に気絶していますね。
すみませんが、少し後ろを向いていてもらえますか?」
俺は素直にそれに従った。それが裸の女性に対する同性の気遣いなのだろう。
すると……。
パチーンッ! パチーンッ! パチーンッ! パチーンッ! パチーンッ!……。
小気味の良い破裂音が、後ろから聞こえてきた。
思わず振り返った俺は、その光景に驚いた。
女神は仰向けにしたオリビアに馬乗りになって、髪の毛を持って顔を持ち上げながら顔を往復びんたしていたのだ。
これが、キャットファイトというものか。
トクン。
あれ? なんだろうこの心臓の鼓動は。
トクン、トクン。
俺は、今、初恋をした少女漫画の主人公のようなトキメキを感じている。
トクン、トクン、トクン……。
裸の女性が往復びんたされている姿を見て、俺がまさか興奮しているだと?
すると突然、頭の中に音が鳴り響いた。
テッテレ〜♪ テーテー♪ テッテレ〜ン♪
目の前の空中に不思議な文字列が並び、ボーカロイドのような音声がそれを読み上げた。
――――――――――――――――――
"異常なまでの性欲"の称号を達成。以下のスキルを習得しました。
・《誰にも言えない性癖》 Lv10
・《自分では違うと思ってるけどマジ変態》 Lv25
・《弱い者虐めが大好物》 Lv3
――――――――――――――――――
いや、待て待て。
これじゃあ、俺は、弱い者虐めが大好きな最低の変態野郎って事なのか?
違うったら違うぞ! 俺は、見たことない状況にビックリしちゃっただけなんだい!
俺は、ノーマル! ちょっとだけエッチな普通の男なのっ!!!
新たな称号にそんな抗議をしていると、オリビアが気を取り戻した。
「う、ううん。ああ、女神様。私はいったい……」
オリビアは、何かを言いかけたのだが。
パチーンッ!
そんな事はお構いなしに再び、びんたを続ける女神。
パチーンッ! パチーンッ! パチーンッ! パチーンッ!……。
「この小説のヒロインは女神のわたし一人っ!!!」




