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水の女神

 どこまでも続く砂丘と逃げ場のない強烈な紫外線の中、オリビアを先頭に、女神、俺の順でひたすらに歩を進める。

 オンボロイド・シリーによれば、現在の位置では救助を呼ぶSOS信号はどこにも届かず、一番近い町まで移動する必要があるそうだ。

 もしそうしなければ、リ〇コ博士が出てくる確率で死に至る。


 現在、13時15分。食料も水もなく、灼熱地獄の中を3時間半以上歩き続けている。

 俺のかくべき汗はもう皆無で、口の中はカラカラ。熱中症の為か思考が朦朧とする。


 ふと、目の前の視界が揺らいだ。

 足はもつれ、膝をつき、そのまま砂の地面に顔から倒れ込んでしまった。


「何ですか、だらしないですよ。

 あと、140㎞以上は歩かないといけないというのに。

 早く立って歩いて下さいな」


 女神は意外にも元気で、脱水症状の俺へ無慈悲に発破をかける。


「い、いや、これ絶対に、無理ゲー。

 もう無理。一歩も歩けない……」


 倒れたまま、カスッカスの声を何とか絞り出した。


「女神さま、どうしました?

 少し休憩しましょうか? 私は大丈夫ですけど」


 オリビアは異変に気付き、こちらに戻って来た。

 その足取りは、しっかりしていて疲労など微塵にも感じられなかった。

 どうやら、鎧の魔人の加護が効いてるらしい。(手拭い一枚の半裸のくせに)


「この人が、もう歩けないと駄々をこねるんですよ」


「まあ、それは良かったじゃないですか。

 丁度いいから、ここに置いて行きましょう」


「うーん、そうしたいのは山々なんだけど、実はちょっと困るのよねえ……」


 女神は、ハアとため息をつくと俺の傍らに膝をつく。

 そして、優しく俺のあたまを持ち上げると、正座した太ももの上へ優しく置いた。

 膝枕だ。


「わたしが水の女神で良かったですね」


 そう言うと女神は、その顔を俺のすぐ目の前に持ってきた。

 そこに見えるのは潤んだ艶やかに見える唇。それが、俺のそれにゆっくりと近づいてくる。

 間違いない。口移しで水を与えようとしているのだ。

 さすが水の女神。お口の中で水を生成できるのだろう。

 まさか俺の人生のファーストキスがこんなシチュエーションになるなんて……。

 俺はこんな嬉しいイベントが発生するなんて思わず鼻息が荒くなったが、それが彼女にかかったら嫌われちゃうかもと乙女チックな考えに至り、呼吸をグッと我慢した。


 ドックン・ドックン・ドックン……。(心臓の音)


 すると女神は、俺の口を強引に手でこじ開けてから、何を思ったのか人差し指を自分(女神)の喉奥に突っ込んだ。



 オロオロオロロロロロロロロッ!!!


 俺の初めてのキッス(?)は、ゲロの味。








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