悪魔の正体2
近づくにつれて、俺の悪魔(女神)への疑念は現実のものになってゆく。
もう、手を伸ばせば届く範囲にきても悪魔は俺のことに気付いていない。
足元に転がる羊の頭はどこを見ているのか、その目は瞬きひとつせず生気はなかった。
もう、間違いではない。
絢爛豪華な椅子に座る悪魔の正体は、魂のないただの人形だったのだ。
しかし、なぜか女神のひとり言はまだ続いている。
「ふんふん、まず異世界転位タブを選択と。
ん? あれ? タブってなんだっけ?
えーと、ああ、これね、これ……」
俺はさらに近付き、声のする悪魔の人形の後ろの方を覗き込んだ。
そこにはブツブツとひとり言を言う怪しげな気配が……。
ひと目で若い女性の後ろ姿だと分かった。
髪は南島の海のような透明感のある奇麗な碧で滑らかに背中に降りかかる。
着ている服は、神聖な雰囲気を醸し出す美しい白の修道服。
こちらから見ると、体躯座りでスマホを操作する後ろ姿が、何だかとても滑稽に見えた。
「転移人数設定を、単独から複数人に変更して魂のリンクをチェックと。
これで一応、変更項目は全部かな。
でもってマイページに戻って、各項目が変わっているのが確認できたら、うん良しOKっと」
俺たちを転移させる為の一通りの設定が終わったらしく、その体躯座りの碧髪女性は大きな声で言った。
「すみません、お待たせしました。
転移の準備が出来ましたので、もう行っちゃいますね。
えーと、新しい世界があなたにとって素晴らしい人生になりますように。
短い時間でしたが、ガチャのご購入ありがとうございました。
それでは、今度こそ、さ・よ・う・な・ら~(あ、ポチッとな)」
その瞬間、また青白い光が俺を囲い、またオリビアも同じくだった。
しかし、近くにいた俺が光ったことで、悪魔人形の後ろの女性にバレてしまい、彼女は驚いた様子で慌ててこちらを振り向いた。
その顔は、もちろん美少女ほにゃららで。
それを見た俺は何を思ったのか、素早く手を伸ばして彼女の襟首をグッと掴んだ。
そして、俺たち三人は異世界に転移したのだった。




