新しい仲間
「ただし、おぬしの場合は魔王討伐という神命があるので、これが達成された暁にはこのカルマより外しても良いのじゃ!」
「うーんと、つまり俺が死んで永遠のスケルトンになるのを回避するには、神様から言われた魔王討伐を死ぬ前に達成するしかないってことですか?」
続けて話された内容を吟味して俺は、こう尋ねた。
「ザッツライト!! (その通り!!)
両手の人差し指を俺に向けて答える幼児。
「なるほど…」
俺はこれまでの経験と今、持っている情報でこの神から与えられた試練をどれほどの確率で達成できるかを考えてみる。
「神様。
この魔王討伐という試練について、ひとつ俺からのお願いがあります。
今のところ俺を取り巻く環境を考えると存在しているかどうかも明確にはなっていない魔王を討伐できるかどうか、自信がありません。
もっと、協力的でこの異世界に博識な人材でもいればありがたいのですが…」
「ふぇ? 今のパーティーメンバーでは力不足ってこと?」
肯定のために頷いた俺を見て、恵ノ神様は腕を組んで少し考えてから、「わかったのじゃ!」と一言。
すると、どこから取り出したのか白衣を上着に羽織ってこう続けた。
「ここに、3匹のモンスター・ヒューマンがおる」
と同時に神様が登場した時と同じく、天空からの3本のスポットライトがそこに人を照らしだした。
1人目は、中年から高年齢にかかるくらいの女性でなんだか意地悪そうな顔。
2人目は、20代後半から30代前半に見える少し気の強そうなエプロン姿の美人女性。
3人目は、同じく20~30にかけるぐらいのくたくたのスーツを着た俯いた男性だった。
「あれ? このシチュエーションに何か心当たりがあるのだけど…」
思わず出た俺の言葉も気にせずに恵ノ神様は続ける。
「この3匹にはそれぞれ属性があってじゃんけんのような特徴があります。
姑タイプは、嫁に強く夫に弱い。
嫁タイプは、夫に強く姑に弱い。
夫タイプは、姑に強く嫁に弱い」
「これ、ひょっとして『ポ〇モン』だよねっ!!!
しかも、『ポ〇ットモンスター 嫁・姑』!!!」
「あっ! ごめん。間違えたのじゃ。
夫タイプは、嫁に弱くて、姑にも弱かった」
「夫、そんなんじゃ誰にも選ばれないっ!!」
その後、神様から姑タイプのいびり魔術がどれだけ強いのかとか、嫁タイプが腰回り気にして動画配信のヨガ教室を見始めたとか、夫が就職した会社がもうすぐ倒産するとか、いろいろ説明を聞いたが結局、俺は見た目で嫁タイプを選んだ。
そして、俺は再び目覚めた。
今回、見えるのは馴染みのある天井。それは、俺たちが地獄に落ちる前に借りていた宿屋のもの。
つまり俺は、死後の地獄の世界から現世へと戻ってきたらしい。
俺は、寝ているベッドの上でふと視線を横にずらすと心配そうに顔を覗き込む女神がひとりで座っていた。
「大丈夫ですか?」
「ああ」とぶっきらぼうな返事をしてから今見ていたものが夢ではない事を確認するべく、女性(嫁タイプ)が訪ねて来なかったかと聞いてみた。
すると、女神はこう答えた。
「はい。
確かに女性が来ましたが、『嫁はわたくしでもう間に合ってますけど』と言ったら帰りました」
俺 「………」




