パチンコ屋の客の目は、もう死んでいる
「なんじゃあ〜、こりゃあ〜!!」
賽の河原地獄の様子を見にきたパンナコッタはその光景を見て思わず叫んだ。
それもそのはず、そこにいたのは石を積む鬼たちにその傍らでそれを監督する人間ども。
刑を執行すべき鬼と裁きを受けるはずの人との立場が逆転していたのだ。
そのあろうはずもなかった現実に、信じられないとばかり口をあんぐり開ける。
「あれっ? パンナコッタさん、お帰りなさい。
そんなところでどうかしましたか?」
ガシャーン!!!
俺は言いつつ、近くの鬼が積んだ石を思い切り蹴った。
「おっ、おどれら、何してくれとんねんっ!!
何でワシら鬼が石積みしとうねんっ!!」
「いやあ~、俺たちが石積んでんのを見ていて鬼さんも積みたくなっちゃったみたいで。
だから交代してあげたんです」
「そんなことあるかいっ!! ボケーッ!!!!!」
勿論、俺の言ったことは嘘である。
ただ、女神が徹底的に質問攻めにしてあきれた鬼が石を積みだしたのを見た地獄の亡者たち。
すぐにそのまねっこをして、トボケまくりのその結果、次々に鬼と立場を交代させていったのだ。
「おいっ!!! ここの地獄担当の鬼どもっ!!!
今、すぐに石を積むのを止めーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!!」
パンナコッタが見かねて大声でこう叫ぶと、一心不乱に石を積んでいた鬼たちが少しだけ意識をこちらに向けた。
だが、その朧気な目はすぐに積み上げている石の方に戻して再び鬼たちは石を積み始める。
その光景は、俺はどこかで見たような気がした。
そう、あれはパチンコ屋で負けが込んでいる客たちがその背中に、一瞬通った店員の姿を確認して再びパチンコ台に向けられる死んだような目(←ある意味、魔眼)であった。
パンナコッタは、それを見ると一つ呻いた。
「くそっ!!! 一体全体どうなっているんだ!!!
とにかく、閻魔大王様に報告じゃいっ!!!」




