路地裏通りのお約束
俺は、今、街で一番の大通りに来ている。
そこで今日は、月に一度の青空市場が開かれていたからだ。
周りでは肉・野菜の食材から物珍しい骨董品まで通りを埋め尽くさんとするように出店とお客で溢れかえっている。
とは言っても、俺には今のところ何か欲しいものがあるわけではない。
なぜ、俺がこんなところに来たのかというと、一言でいうならば、いろいろと『煮詰まった』からだ。
俺には、この世界でどうしてもやらなきゃいけないことがある。
『行方不明の魔王を探し出し、打倒すべし』
魂に刻まれたこの目的は、神々により与えられた使命であり、これが果たされなければ俺もこの異世界も全てはなかったことにされてしまう運命。
すぐにでも動き出さなければならない俺なのだが、入手できた情報は大昔、魔王が異世界人により滅ぼされたというおとぎ話だけ。そこからどう頭をひねっても、次の情報へつながる道筋もどこへ向かえばいいのかも分からない。
だが、オリビアは言う。
「『裏切り者の英雄』に今、この場所を知られてしまった以上、早急にここから離れなければなららい。
そうしなければ、私の近くにいる周りの人々に被害が及んでしまうからだ」
次に向かうべき場所を決めなければならなかった。
しかし、いくら天才の俺でもこの手持ちの情報だけではどうしようもない。
うーん、うーんと唸りながら部屋の中で悩み苦しんでいると、女神が気を遣ってこう言ってくれたのだ。
「少し、気分転換でもしてみてはいかがです?
今日は青空市場がひらいているみたいですよ」
次に踏み出す一歩を右か左か、答えの出ない俺はとりあえずは素直にそれに従うことに。
実際に市場に来て賑わう人々やお店を見ると、気持ちが少し和らいだのを感じる。
「東に行こうが西に行こうが、どっちでもいいか。だって、どうせ分からないんだから」
すると鈍く感じていた俺の感覚がもどり、鼻を刺激する美味しそうな臭いに気が付いた。
その臭いを頼りに進んでゆくとそこには、肉と野菜の串焼きを焼いている屋台が。
「いらっしゃい、兄さん。美味しいよ」
そういう少し強面のおじさんの言うとおり、肉の油とソースが炭火で焼かれて漂ってくる匂いは強烈に食欲を刺激し、美味しいのはまず確実。
俺は、そのまま二本それを買って、少し静かなところで味わおうと表通りから路地裏へと移動する。
ちょうど腰掛けられそうな木箱を見つけ、その場所に向かうその時だった。
「やっ、やめて下さい!」
「グへへへ(笑)、いいじゃねえか。姉ちゃん。
別に減るものじゃねえんだから、少し俺たちと遊んでくれよ。
いい思いをさせてやるからさあ」
見るとそこには、お胸の大きい可愛いお姉さんが、チビ、デブ、ヒョロヒョロの物騒な男三人組に絡まれている。
俺は、そのシチュエーションを見て思わずこう叫んでしまった。
「ついに、キターーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!」




