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ラブ・ストーリーは突然に

「私の知るお話はこれくらいなのだが、どうだ? 何か参考になったか?」


 長時間しゃべっていたせいでオリビアは、少し疲れた顔をしていた。


「うーん、残念だけど魔王については情報が少なすぎて今の俺には手掛かりになりそうなものが思いつかなかったよ」


「そうか。それは残念だったな。

 私がもっと博識であったなら良かったんだが……」


 心から悔しそうなオリビア。


「いや、俺からしたらオリビアは十分に博識だよ。

 ただ、こっちの世界の魔王はあまり伝承として残すような大した悪行がなかったのかもしれない。

 もしくは、想像以上のもっと過去にいた魔物で、今ではおとぎ話の一説にしか出てこないような希薄な存在になってしまったとか。

 まあ、オリビアの語ってくれた内容を踏まえて落ち着いてから慎重にもう一度よく考えてみるよ。

 それにしてもお話しに出てきたお爺さんから察するに、こっちの世界では別世界からやって来る異世界人って結構いるのかな?」


「ああ、かなり珍しい人種ではあるがその存在は昔から確かに実在する。

 私自身、今まで生きてきてわずかだが一緒に旅した者もいるしな」


 そう言って懐かしそうに空を見上げたオリビア。

 異世界人の俺に、差別(変態扱い以外)もなくひとりの人間として何かと助力してくれるのは、これまでに異世界人も含めて様々な人々と経験を重ねてきたからなのだろう。まさに英雄として毅然として正しく誰にでも公平で守ってみせる姿を俺は思い出していた。


「なんか、俺のような得体の知れない異世界人に色々教えてくれたり助けてくれたりして、ありがとうな。

 今さらなんだけど、俺、お前のような尊敬できる真の英雄に出会えて本当によかったよ」


 そう俺が柄にもなく本音で語ってしまった時、突然オリビアが俺の胸に飛び込んできた。

 俺は、座っていたベンチからずり落ちてオリビアに押し倒される格好で背中を地面につける。

 驚き過ぎて困惑した俺だったが、胸になお顔をうずめるオリビアになんとかこう言った。


「えっ?! こんなところでっ?!

 だっ、ダメだよ!

 俺には女神の奥さんがっ!!!」


 と、次の瞬間、


 ドッッッゴーーーーーーーーーンンンンッ!!!!!


 凄まじい落下音と共に、衝撃波が俺とオリビアを襲った。

 何が起こったのか訳もわからず、とっさにカバーした両手の隙間から見上げた俺。

 そこには、今まで座っていたベンチが木片となり飛び散っていて、跡形もなく圧搾されていた。そして、そのベンチあったところには、高さ2mは優に超す美しい装飾の施された重厚なシルバーの()()()が突き刺さっていた。


つづく


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