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そして、たどり着いた場所 その5

 ファミレスの座席に座わり下を向いて動かなくなった神様はしばらくの間、そのまま時を流した。

 気づくと大窓から見える外の景色は、いつの間にか曇りの空に変わっていて暗くどんよりとしている。

 そんな時、恵ノ神様がポツリと言った。


「……、いつからじゃろうか?」


 それは、俺に話しかけているものではなく、自分に問いかける心の声が漏れだしたもの。


「わしがこれを書き始めたのは、本当に出来心なのじゃ。

 いたずらに思いついたギャグなんで適当に考えて、ぽぽぽいと書いちゃった。

 でも、書くからには一人でも誰かに読んでもらえて笑ってもらえれば、嬉しいのじゃけどなあとささやかに思わないこともなかったのじゃ。

 ところが、いざ掲載してみたらひとりどころか何人もの読者に面白いと言ってもらえて、感想までくれて……。

 わし、そんなこと今までなかったから凄く嬉しくなっちゃって、調子にのって続きを書いたらまた読んでくれる誰かが現れて。


 『笑って読んでくれる誰かがいればそれでいい』


 そう思いながら書き進めてその頃のわしは、とても楽しく過ごしていたのじゃ。

 毎日、面白いことはないかと考えを巡らせ、思いついたネタを文章にする。

 それだけで心がワクワクしたし、このままみんなを楽しませられればそれはそれで嬉しくてありがたく充実しておった。

 じゃけど、わしの中の何かはそれを許してはくれなかった。

 読者から感想をもらえばもっと多くの感想が欲しいと思い、PV(読まれた回数)やブックマークが増えればもっともっと大きな数字が見たくなる。

 それどころか、小説の公募で認められる者がいれば羨ましくてしょうがなくなり、周りで書籍化すると聞くと人知れず嫉妬するようになっていた。


 いつからじゃろうか? 本当に。

 わしがこんなにも情けない欲にまみれた愚かな神になってしまったのは……」


 そう言って上げた神様の顔は、悲しげにも少し笑っているように見える。


「そんな自分に気付いたから、もうここで終わらせようと?」


 そう聞いた俺に、表情を真剣に変えて惠ノ神様はコクリとひとつ頷いた。

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