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そして、たどり着いた場所 その3

 ここ、『異世界(物語)』を終わらせる。


 そう言った神を名乗る幼児の一言に俺の思考はついて行けてはいなかった。


「あの、俺、よく分からないないのですが、世界を終わらせるとはどういう意味なのですか?」


「それは、文字どおりの意味じゃよ。

 これまで、おぬしの見てきた異世界というものはなくなる。

 今までのストーリーはおぬしの記憶には残るかもしれないけれど、これからの未来は全くの白紙。

 異世界は消えて、何もなかったことになり、ここから先は無になるのじゃ」


「じゃあ、そこに生きて暮らしていた人達や生息するモンスターは?」


「うん。みんな、いなくなっちゃうね」


 少しだけ悲しげに笑顔を見せた神様に、初めて俺はことの重大さを感じ取った。


「何でそんなことになっちゃったんですか?」


「それは、わしがいけなかったのじゃ。

 本当は、この異世界は第一話で終わるはずのいたずらで書いたもの。

 だけども、周りに面白いと言われてついつい調子に乗っちゃって続きを書いてみたのじゃ。

 そうして繰り返すうち、あれよあれよという間にこんなに(100話以上も)続いちゃった。

 でも、改めて内容を見直してみるとパロディーだったりいい加減な設定だったり……。

 とてもじゃないけど、小説の公募で入賞することはないだろうし、ましてや書籍化なんて絶対に不可能なんじゃよ。


 このまま、この異世界を苦労して書いて行っても到達するべき未来がないのじゃ!


 であれば、もっと設定を詰めて念入りにプランを立てたオリジナル作品を一から創った方が良いはず。

 おぬしにも散々苦労させて悲惨な目に合わせちゃったしね。

 だからと言っては何じゃけど、今まで頑張ってくれたお礼として最後におぬしの願いをひとつだけ叶えてハッピーエンドにしたいと思うのじゃ。

 元の世界に戻って助けた可愛い女子高生と結婚するのも良いし、新しい魔法を習得したまま現代日本に戻って嫌な上司をざまぁするっていうのでも良いし」


 俺の頭の中に異世界へ来てからの思い出が走馬灯のように流れる。

 初めて女神と会った時は、悪魔の格好でおカネをぼったくられ、何度も何度も痛い思いをして死に戻りを繰り返した。それでも、何とか異世界にたどり着いたと思ったらそこは砂漠の真ん中で、死と隣り合わせの半月にも及ぶ苦行の行脚。その後も、地下牢獄に囚われたり毒を飲まされそうになったり。極めつけは永遠に続くかと思われたゴブリンに受けたリンチでゴブリン恐怖症になったり。

 確かに、この異世界に来てからというもの、死ぬほど踏んだり蹴ったりで本当に思い出したくない辛い思い出ばかりであった。



 だけど、本当にそれだけであっただろうか?



「あの、ちょっといいでしょうか?」


 俺は、意を決して恵ノ神様に話し掛けた。





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