そして、たどり着いた場所
気付いたら俺は、何もない真っ暗な場所にいた。
「ああ、そうか。
また俺は、来てしまったんだな。
女神は『選択の狭間』なんて呼んでたっけ。
トラックにひかれて死んだ俺と悪魔の姿の女神が初めて会ったあの世界。
うーん、でもあの時のように女神の姿が見えないけど……」
しばらくの間、あぐらをかきながら途方に暮れていたが、ふと俺の耳にラジオの周波数が偶然にあった時のように声が聞こえた。
「おーい! おーい! 聞こえてるかなぁ?」
その声は予想していた女神ではなく、高い声で少し皺がれている特徴的な声だった。
「はーい! 聞こえましたよー!
でも、真っ暗で何も見えないんです。
何とか出来ませんかー?」
「ええっ? ああ、そう? そうじゃったね。
すまぬ、すまぬ。
ちょっとだけ待ってくれなのじゃ!」
その後、真っ暗闇だったのが突然、眩しく明るくなり目をつむらずにはいられなくなる。
少しして、まぶたごしに光になれた頃、ゆっくりと目を開いて俺は驚いた。
なんと、元の世界ではよく行ってたような馴染みのあるファミレスにいたのだ。
周りを見ても、他の家族や友人、学生のカップルなどとてもありきたりの光景。
店内ではガヤガヤとした人の会話にウェイトレスが運ぶ食器の音。大窓から見える外の景色には往来する人と車。そのどれもに違和感を感じられず、ここが本物の元の世界であると疑いようもなかった。
違和感を感じたのは、俺の座席の対面に座る人物だ。
頭の大きさと身長のバランスから5~6歳くらいの可愛いらしい子供の外見。
発色の良い緑の髪に薄紫色の綺麗な瞳で、こちらをニコニコと幼い屈託のない表情で見ている。
「あの、どちらさまで?」
たまらず聞いた俺に、その子供はそのまま笑顔で答えてくれた。
「わしは、『恵ノ神様』じゃ!」
目の前の子供の頭の上で浮いている金のリングがひとつキラリと輝いた。




