異世界こっくりさん、開催!!! その5
必殺技名を大声で叫んだあと、俺はドザエもんと全く同じタイミングで『ワン! ツー! ドーン!!!』と言い放ち、同じタイミングで力を込めた。
オリビアもその意図を直ぐに察知し、俺に続く。
「こっ、これはっ!!!」
驚きの声を出したドザエもんの快進撃がビタリと止まる。
俺は、ドザエもんの必殺技に同じ必殺技で対抗させた。
今まで力をいなし、隙を突いて十円玉を前進させていた力と同じタイミングで反発する力を加えたのだ。
さすがの必殺技もこれでは無効となり、十円玉はYESの手前ギリギリに張り付いた。
「ぐぬぬぬぬ……、ひっ、卑怯だぞ!
6年3組こっくりさん同好会ルールでは、必殺技を同じ必殺技で防ぐのは禁じ手なのに!」
今度は、自分が渋い顔をしているとは自覚していないドザエもんに俺は言ってやる。
「残念だったなドザエもん。
俺達は、もう大人なんだよ。もう、とっくに小学校は卒業しているんだ。
だから、その6年3組ルールに意味はないのさ」
「くそっ! これだから大人ってヤツは嫌いなんだっ!
だが、今思いついたような付け焼刃の技で十年以上研鑽してきたボクのダブル燕返し『ワン! ツー! ドーン!!!』を破れるはずがない!」
「さあ、それはどうかな? 何事もやってみなくちゃ分からないだろ?」
お互い見つめ合い、少しの時間だけ沈黙が流れた。
ドザエもん「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!(叫び)」
俺 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!(叫び)」
二人同時に気合のオーラをまとい雄たけびをあげた後、俺達はお互いに同じ必殺技を繰り出した。
「「『ワン! ツー! ドーン!!!』 『ワン! ツー! ドーン!!!』 『ワン! ツー! ドーン!!!』 『ワン! ツー! ドーン!!!』 『ワン! ツー! ドーン!!!』 『ワン! ツー! ドーン!!!』 『ワン! ツー! ドーン!!!』 『ワン! ツー! ドーン!!!』……」」
外から見れば、大の大人四人が小学生用の机にこっくりさん用シートをしき、必殺技を叫びながら十円玉を押し合っているという中々に滑稽な姿。
だが、やってる本人達はいたく本気で、この状況に高揚し、集中し、熱狂した。
それは大人気のスポコンアニメのように。
滴る汗も気にせずにおのれの知恵と力を強敵のライバルに全力でぶつけられる高揚感。
いつの間にか俺は、ドザエもんへの憎しみが消えてここまで鍛え上げた努力に尊敬と友情のような感情を抱いていた。
※注意:彼らがやっているのは、こっくりさんです
(つづく)




