九十服目 Play Back High School(6)
探偵部。
非公式な、私が提案した部。
マスク・ド・コアトルの動向をある程度把握しやすくするために提案した部。
その活動が、本格的に始まる…………その前に事態は動いた。
なんと私達のマスターが、マスク・ド・コアトルの情報源となっている木下千桜の存在を危険視し、私を始めとする幹部クラスに彼女の対処を指示してきたのだ。
まぁ、私としては……マスク・ド・コアトルにとって都合良くコトが進むのは、黙って見ていられないので率先して動いた。
ついでとばかりに。
彼女をマスク・ド・コアトルの弱点として有効活用するために。
買い物に行く途中の彼女を昏倒させ、拉致。
校舎の壁の向こう側に広がる密売組織のアジトに連れ去って、最近、私が開発を進めている、精神を破壊し隷属させる新型煙草によって、マスク・ド・コアトルを無力化させるためだけの人形に仕立て上げ……。
そして私の計画通りに……マスク・ド・コアトルの煙草を浴びたせいなのか、気分が悪くなって、ついつい、マスク・ド・コアトルに対してキレたりもしたけど、なんとか自然に、戦線を離脱して、マスク・ド・コアトルを、木下千桜のもとへと拉致する事に成功して……。
心身共に苦しませながら殺す事は。
お父さんと同じように、苦しませながら死なせる事はできなかったけど……まぁ結果オーライかな。
私でも充分殺せるほど弱体化したし……。
※
「あぁ~~~~ららららら……まさか、こんな結末になるとはねぇ」
「………………は?」
予定外な結末ではあるけど、それなりに結果は残してくれた木下千桜を見ながらそう言った私に、マスク・ド・コアトルは驚きのあまり丸くした目を向けてきた。超ウケるんですけど。
「…………………………やはり、貴様は……メイサ・ヤガミじゃったのか?」
「覚えててくれたんだ。別に嬉しくないけどね。ツンデレ的なアレじゃなくてガチで」
やはり、って言う事は……薄々気付いてたんだ。
まぁ体育館倉庫でヒントを敢えて出したから当然カナ?
「な、なぜじゃ……」
マスク・ド・コアトルは肩を震わせながら言う。
「貴様は、己の罪を悔いて警察に素直に捕まったんじゃないのか!? 事件の後で知ったぞ! ワシの祖父が教えてくれた!」
「…………その祖父のせいで……私の、お父さんは……」
でも、その言葉で。
祖父という。その言葉で。
「私のお父さんはあの事件で死んじゃったんだよ!!!!」
私の中から、余裕が消えた。
木下千桜から、大きく距離を離さんとするように、私はマスク・ド・コアトルの腹へとサッカーボールキックを食らわせた。
マスク・ド・コアトルは、吐血しながら、背後の壁へと吹っ飛んだ。背後の壁、そして床を彼女の体はバウンドした。でもこれで済まさない。
「ッ!? ど、どういう……!?」
しかし追撃する寸前に、マスク・ド・コアトルは私の追撃を読んでいたのか、即座に転がって、私の蹴りを躱した。
そして、その疑問の声は。
私の怒りの炎にさらに油を注ぐ結果となり…………私は彼女へ、さらなる蹴りの攻撃を仕掛けながら、思わず全てを吐露していた。
「お前は知らないだろう。私の身に起こった事を。日系中南米人である私の身に何が起こったのかを!! 富裕層になれなかった日系中南米人がどんな生活をしてるのかを!! 普通に中南米人として生きて!! 家族や友達に普通に囲まれて!! 外国の高校にも転校できる余裕があるようなお前のようなヤツは!! 私が今までどれだけ苦しい思いをしながら生きてきたのかを!! お父さんは!! 私の師匠でもあった人はそんな私に手を差し伸べてくれて……ッ。それを!! それをお前の祖父が!! あの乱闘騒ぎさえアメリカで起こさなければ!! お父さんは死ぬ事はなかったんだ!!!! 私とお父さんは……本当の家族になれたかもしれないのに!!!!!!」




