八十四服目 Play Back(30)
「霧彦!!」
外がうるさくて、意識が覚醒した。
知らない天井が、目の前にあった。
いったい何がどうなっているのか。
すぐにそれを知ろうと思うけれど。
でも……体が思うように動かない。
なんでだろう。
俺には、分からない。
少し、前の事を思い出そうとする。
すると、その瞬間に……頭に激痛が走る。
おかしい。
親の顔とかは、思い出せるのに……最近あった事が、まったく思い出せない。
「霧彦!! 無事か!!?」
でも、それだけでも今は充分だった。
俺を呼ぶ声の主が。今、俺がいる部屋のドアを開けたのが。親父だって分かったから。
頭がぼんやりして、状況が分からない。
でも、親父が呼んでいるから……俺はとりあえず、頭の痛みを堪えながら「あ、ああ」と答えた。
「よかった!! 無事か!!」
親父は、ホッと胸を撫で下ろすと、すぐに俺をおんぶして「すぐに逃げるぞ!! どこかの馬鹿のおかげでここは戦場になる!!」と叫んだ。
ワケが分からない。
いったい何が起こっているんだ?
でも、それを確かめる事はできなかった。
親父におんぶされたまま、どういうワケだか、俺はまた意識を失って――。
※
――次に気付いた時、俺は日本の病院にいた。
俺が起きた事を、偶然検診の時に通って知って驚いた看護師さんが、病院の先生を呼んで、そしてその病院の先生によれば、どうやら俺は気管や頸動脈を強く圧迫されたらしく、そのせいで、脳の一部に障害が起こったかもしれないらしい。
最初目覚めた時、最近の記憶が思い出せなかったのはそのせいだろうとも。
いったい、どんな目に遭えばこんな状況になるのやら。
……もしかすると親父なら……あの時、俺を迎えに来た親父なら何か知っているかもしれない。
「すみません、ところで……ウチの親父を見ませんでしたか?」
いったい何があったのか。
どうしても気になった俺は病院の先生に訊ねた。
すると病院の先生は、看護師と顔を見合わせるや思い悩んだ顔をしたが、すぐに意を決して……俺に告げた。
「心して聞いてくれ霧彦君。君のお父さんはね、君が眠り続けていた、この三年の間に……お亡くなりになった」




