八十服目 Play Back(26)
ついに、決勝戦まで来た。
今までぶつかったのは強敵ばかり。
しかしその全てを、私はルチャ・リブレを使って倒した。
全ては、私にルチャ・リブレを習うように勧め、そして今までそんな私を応援し続けてくれた大切な家族の一人――爺ちゃんのために。
そして私は、決勝戦の相手と。
メイサ・ヤガミという名の日系人とついに対峙した。
『いったい誰がこの対戦カードを予想したでしょうか!? 中南米の神は、今ここに舞い降りた!! ルチャ・リブレ界の文化英雄!! マスク・ド・コアトル!! そして格闘家業界のシンデレラボーイと呼ばれた伝説の武術家、ボギー・ホーガンの愛弟子、メイサ・ヤガミの登場だぁ!!』
『いやぁ、どちらも中南米出身ときましたか。この国出身選手はいったい何をしていたのでしょうね』
『おいっ!! それ以上はブーイングものだぜ!! というワケでまさかの対決になりましたが……おっと、メイサ選手がマスク・ド・コアトル選手に握手を求めているぞ!? 自分がやられた事を相手にしよう……とは、思っていないと思いたいですが果たしてその真意は!?』
司会と解説の声を聞き流しながら、私はメイサを見た。
彼女は、何かを覚悟したような目をしていた。
これからやる試合に対する覚悟だけじゃない。
もっとこう、人生そのものを懸けたような……これは、私も人生そのものを懸けなきゃいけないな!!!!
私は、握手に応じた。
暫し、私はメイサと視線を交わす。
メイサが中国人選手にやられたような事は……起こらない。
彼女とは、良い勝負ができる。
そんな予感が、改めて胸に込み上げてきて……私は笑みを浮かべた。
※
そして、決勝戦は始まった。
始まると同時に、マスク・ド・コアトルは空中殺法を繰り出した。
まるで猿みたいに縦横無尽に球形金網リング内を跳び回る。というかこのリングと彼女の格闘技の相性が良過ぎる。どこから攻撃が来るのか分からない……ならばこうするまで!!
私はリングの下部に寝そべった。
こうすれば、相手がどの方向から私を攻撃しようとも私には見える。死角である背後は金網リングの下部。上方はちょっと心配だけど、でもだからこそ警戒すればいいだけだ!!
私のまさかの戦法に、観客だけでなくマスク・ド・コアトルも驚いていた。
仕方なく彼女は、真正面から私を狙おうと……なんと驚いた事に、そのまま体を広げ背中から飛び降りた!?
「セントーンッッッッ!!!!」
私はすぐに避けた。
直後にマスク・ド・コアトルが、私がいた場所に落ちてくる。
「いてててて」
マスク・ド・コアトルは頭を抱えて、おどけた声を上げたが、すぐに寝そべったまま顔をこちらに向けてきた。
「ようやく真正面に来れたぞ!!」
そして彼女は、私と同じく寝そべった状態のまま体を回転させ、その勢いのままに、かかと落としを私の脳天に直撃させた。
痛い。
まさかこんな奇襲をされるとは。
でも、負けるワケにはいかない。
まだどうなるかは分からないけど……まずはこの試合で後悔がないように全力を出して、それで……師と一緒に、自由の身になるんだ!!




