七十一服目 Play Back(17)
『それじゃあ霧彦君、あとは適当な相手の時に「飛び入り参加」して、この大会をこれでもかと引っかき回してくれ。ワシらはちょっと急用があるからの』
俺に意味不明なリングネームを授けた後……なぜかクロードさんと親父はどっかに行ってしまった。観客席の一番後ろ……立ち席に一人残された俺は暇になったので、とりあえず球形の金網リングに注目する観客に紛れて、会場内を歩き回る事にした。
クロードさんがいったい、何を思って、親父と俺をこの会場に連れてきたのか、まったく分からないけど……武術はやれど蟻一匹殺せないような優しさを持つ親父が信用している師匠だ。悪い事を親父にさせようとかは、考えてないだろう。
そしておそらく、俺がこの場にいる事にも何か意味がある。
なら指示通り、適当なタイミングでリングに割り込んで……いや、できるならば対戦する二人の内、勝った方が物凄く余裕でいる、そんなシチュエーションの時に割り込もう。さすがにバテてる勝者を倒したんじゃ卑怯者呼ばわりされるからな。
※
…………くっそぉ……まだ両腕が痛いし熱いし……それにダルい。
勝利後に、なんとか相手から解毒剤を手に入れ、注射によって摂取(飲むタイプではなかったらしい)した後、とりあえず次の試合まで休憩しようと思ったが……その時に尿意を催し、師に女子トイレ前まで運んでもらい、そしてそこからは自分の力で用を済ませたけど……力が、出ない。
まさか、解毒剤の副作用とかじゃないよな?
というか、トイレの中で、倒れそうなくらい頭がぼんやりする。
かつてイケナイ薬を投与された事はあるけど……まさにそれに近い。
マズい。吐き気とかはないけど。
このままじゃ確実に意識を失う。
かつて薬を打たれた事が……あるが故の予感だ。
そして下手をすれば、私は……この大会の、主催者に……ゲストで、呼ばれた私は、次の……試合には出られない、かも……。
「ねぇ、あなた……大丈夫? ……え、ちょ……もしもし! 大丈夫!?」
そして、私が意識を失う……その直前だった。
ドンドンドン、と……私のいる個室、トイレのド、アが……叩、かれた……。
「大きな音がしたけど、まさか倒れてないよね!? ちょっと待って! 今すぐに助けるから!」
その声が、聞こえると……すぐに個室の、ドアの下、の部分に……声の主の……ものと、思われる……両手が引っ掛けられて……。
「フンッ!!!!」
次の瞬間。
バキバキバキッと音がして。
トイレのドアの、下の部分に亀裂が入って……穴が出来た!?
さすがに、ドアのストッパー部分までは破壊されなかったっぽいけど……なん、て怪力……。もしかして、他の選手だろうか。
だとしたら、その相手とは……できれば、最後に戦いた……――。
「大丈夫!? ねぇ、死んでないよね!?」
――しかし、どうやら相手は……選手じゃないみたいだった。
白と、黒を基調とした礼服を着た。
私と同じ、黒い髪と黒い目の女の子。
天使かというくらいに、可愛い……そんな子だった。




