五十九服目 Play Back(5)
入ってきた少女は、日系……少なくとも、祖父が教えてくれた東ユーラシア人、もしくは私達と同じ南北アメリカ人のように見える。
私と同じ黒い髪、そして浅黒い肌。
瞳の色については……私の場合は青いけど、その少女は黒かった。
背丈に関しては私とほぼ同じ。でも全体的に痩せているように見えて、ちゃんと戦えるのか個人的に心配になった。
もしも私とぶつかった場合、骨を折ってしまったりしないか非常に不安だ。
だけど、相手もそれなりの覚悟を持ってこの場に現れたのだ。手を抜いたら逆に失礼に当たる。なので私は、覚悟を持って現れた相手に、私なりの覚悟の眼差しを向ける事で応えた。すると相手も、それなりに鬼気迫る眼差しを私に向けてきた。
良い試合になる。
なぜかそんな気がした。
「おいメイサ、何してる」
するとその時、私とガンを飛ばし合っている少女――メイサを呼ぶ声がした。
最初はメイサのそばにいて、いつの間にやら控室の奥の方へと移動していた男の声だった。
「…………すぐ行く」
するとメイサは、私との睨み合いを一時中断してから、男……付き添いの人か? とにかくそいつがいる方へと素直に歩いていった。
「おやおや。さっそくライバル認定かの?」
私とメイサのやり取りを見ていた祖父が、ニコニコしながら訊いてきた。
私は素直に頷いた。少なくとも彼女は私の睨みを受けても臆さなかった。相手にとって、不足はないだろう。
「うむうむ。カノアちゃんがどこまで行けるか楽しみじゃな」
祖父は相変わらず笑顔のまま、そう言った。
というか、今日はよく喋る祖父だ。
もしかしてお喋りになるくらい格闘技が好きなのかな。
「あ、ところで爺ちゃん」
するとそこで、私は祖父に聞き忘れていた事があるのを思い出した。
――どうも都合が良過ぎる、私のリングコスチュームについての質問だ。
「私のこの衣装、いったい――」
「おっと、そうじゃ忘れるところじゃった」
しかし、私の質問は途中で中断された。
まるで、その答えを出すのを渋っているかのような。
もしくは、言うタイミングを計りかねているような。
とにかくそんな戸惑いが感じられる、困った顔をした祖父によって。
「カノアちゃんに紹介したい子が、もうすぐ来るハズなんじゃが……初めてのアメリカらしいから、道に迷っとるかもしれん。電話をしてみるからちょぉっと控室で待っていてくれんかの? ここは電波が通じなくてかなわん」
「…………紹介したい子?」
「うむ。日本人の武術家とその息子じゃ。カノアちゃんのライバルの一人……に、なるかの?」




