五十八服目 Play Back(4)
「カノアちゃん、ちょっとワシとアメリカに行かないかの?」
エレメンタリースクールから帰ってきた直後の事だった。
祖父が珍しく言葉を発していた。普段はあまり喋らない祖父が……いったい何が起こったのだろうか。もしくは怒ったのだろうか。しかし私に、何か悪い事をした記憶はない。毎日ちゃんと学校と稽古には行っているし、成績も……学校の方は中の上くらいだけど、良い方の成績を残せている。
「実はの……ワシの知り合いが、子供だけの格闘技大会をアメリカで開くらしいんじゃが、その選手の一人が病気で出られなくなっての」
「こ、子供だけの……格闘技大会!?」
な、何だその面白そうな大会!!
と、というか……えっ? そ、その口振りからして……?
「で、出てもいいの!?」
思わず私は訊いていた。
どういうワケだかエレメンタリースクールに入った頃から、私は格闘技を習っている。滅多に喋らない祖父の勧めだ。まぁここメキシコは、言ってはなんだけど、物騒な国だから護身術を習っといて損はないし、それ以前にメキシコは――。
「もちろんじゃ」
祖父は即答した。
「カノアちゃんも、そろそろ実戦経験を積んでみてもいいかと思っての」
「おおおおっ! え、でも……父ちゃんと母ちゃんは?」
私は気分が高揚して、思わず雄叫びを上げてしまった。
なにせ今までの修行の成果を目に見える形で確認できるのだ。これで興奮しない方がおかしい!!
しかし、私は途中で……両親はこの事を何て言うのか気になった。
いくら私が格闘技の稽古で良い成績を残しているとはいえ、国外遠征なんて両親がそう簡単に許してくれるとは……。
「二人には話しておる。なぁに、かつての失敗を繰り返さないためと言ったら渋々折れてくれたのじゃ」
「…………失敗?」
なんか私が知らない話が出てきた。
「ッ!? ああ、こっちの話じゃ。とにかく!」
そして祖父は、強引に話を切り替えて言った。
「カノアちゃん、ワシと一緒にアメリカへと遠征じゃ!」
そして私は、急遽祖父とアメリカに飛んだ。
祖父が私をアメリカに誘った、本当の理由も知らずに……。
※
会場の控室に着いてすぐに、私は祖父から紙袋を手渡された。
祖父が言うには、中身は今回の大会のために用意した、私の衣装と仮面らしい。
なんで祖父が、こんなモノを用意しているのか。
衣装など、稽古開始前に先生から買うように言われて買ったモノ……私が旅行鞄の中に今も入れている衣装でいいんじゃないか、と疑問に思ったけど……せっかくの祖父からのプレゼントだ。着ないワケにはいくまい。
そう気持ちを切り替え、私は祖父から渡された衣装を手に、控室の奥にある女性用の脱衣所へと行った。
そうして着た衣装は、大人の水着に比べると露出が控えめであるが、それなりに露出度が高いリングコスチュームと、龍……正確には、私達の故郷に伝わる、神の一柱であるケツァルコアトルを模した仮面だ。
そして、着たからこそ……私は改めて疑問に思った。
今回の遠征。そして私のサイズにジャストフィットな衣装と仮面。
何もかも、都合が良過ぎる。この衣装のデザインはいつしたの? いつ家にこの衣装が届いたの? もしかしてこの大会に出場する事はずっと前から決定していたの? でもそれだと、出場選手の欠員が出たからっていう理由は嘘なの? 嘘なら嘘で、どうして私はこの大会に出場しなきゃいけなかったの?
いや、戦える事に文句はない。
寧ろ、やる気が満ちてくるけれど……疑問がある限り、ベストコンディションで戦えるかどうかはちょっと疑問だ。
「おお、仮面のサイズとか合っていて良かったのじゃ」
「……………爺ちゃん……なんですぐ衣装とか用意できたの?」
だから私は、衣装を身に着けた私を見てニコニコしている祖父に改めて質問したのだが……直後、私は凄まじい闘気を感じた。
ハッとして、振り返る。
するとそこには、出場選手の一人であろう……あらかじめ、道着っぽい服を着てきていた少女がいた。
スペイン語での小学校、中学校、高校の名称は聞き慣れないと思うので、英語にします( ̄▽ ̄;)
両親や祖父については、なんとなく聞いた事があります(ぇ




