五十七服目 Play Back(3)
私の師となった元格闘家指導の下、修行が始まった。
だから私がやる格闘技は、自然と元格闘家のモノと同じになった。
元格闘家が使う格闘技は、ブラジリアン柔術に近いモノ。
もっと言えば、そこに喧嘩殺法が加わったような総合格闘技だった。
ちなみに元格闘家も、子供の頃は私と同じ、貧困層出身で、同じ貧困層の子供との喧嘩の中で、技を磨いていたらしい。そしてその後、非合法な格闘技試合に出場したりして、それなりの成績を収めたけど、相手を誤って殺してしまい、組織へと来たようである。ちなみに格闘技の方は、子供の頃、浮浪者と化していた日本人移住者の一人から習ったそうだ。
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当然だけど、その修行は過酷だった。
でも、ゲスな構成員に乱暴される時よりは遥かに良い。
とてもやりがいがあるし、それに元格闘家が何かしてくれたのか、最近私の食事が変わったしゲスな構成員に乱暴される事も無くなった。
もしも本当に、元格闘家が何かをしてくれたのだとしたら……彼の狙い通りに、ボスのボディガードになる事で恩を返せたらな、なんてふと思った。
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「よぉメイサ、一週間後のコレにゲスト出演する事になったぞお前」
そして、組織に拉致されて……格闘技の修行を開始してから二年後。
私が十二歳になった日に、師はニコニコと笑いながら、私の名を呼びながら一枚のチラシを差し出した。
【UNDERGROUND COLISEUM】
デカい、そんな文字がまず目を引くチラシだった。
だが文字を教わっていないので、何と書いてあるのか分からない。
師の言った台詞からして、もしかして、格闘技大会のチラシなのか……とは考えられるけど。
「アメリカの方でやる、格闘技大会らしい」
師は笑顔のまま言った。
「ウチの組織と繋がりがある、アメリカの麻薬組織が所有する建物の地下階でやるそうだ。それも、今回は子供限定。格闘技を始めとする戦闘術の才能のあるガキを集めて、将来、ボスや幹部クラスのボディガードにするヤツを決めるんだと。お前にゃおあつらえ向きのデビュー戦の舞台だ」
その説明に、私は……これ以上ないほどの心臓の高鳴りを覚えた。
それも、薬を打たれた上での乱暴……なんて、目じゃないほどに。
いや、薬を何度か打たれたせいも、もちろんあるかもしれないけれど。
とにかく私は、今までやってきた鍛錬の成果をこれでもかと試せる舞台が整い、そしてそこへ行ける事になって――。
――生きている。
そう心から実感できるような興奮を……生まれて初めて覚えたのだ。
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当日。
メキシコからアメリカへは、当然ながら不法入国する事になった。
国境越えは、当たり前だが難しい。
国境警備隊の目がある。だけど師が言うには、ウチの組織の構成員の知り合いの中に、その国境警備隊員がいるそうで……その隊員の手引きにより、私は師と一緒に、なんとかアメリカに入国したのだった。
※
師が言うには、その格闘技大会は、表向きは一般人の入場どころか、飛び入り参加もOKな特殊な大会らしい。なんでも、警察の目を誤魔化すためにこんな大会になったそうだけど……ご苦労な事だ。
というか一般人、なんで犯罪者絡みな大会である可能性に思い到らないんだ?
格闘技を始めとする戦闘術だぞ? その中には当然武器術も含まれるぞ? 普通の格闘技大会以上に危険で違法だと思うんだけど……まさか入場する客は、そんな違法な大会に心惹かれるアブナイ連中なのか。
「オイ、選手控室はこっちだぞ」
そんな事を思っていると、師に呼ばれた。
会場入りしてから、その会場の事を考える事に夢中で、呼ばれている事に気付かなかったようだ。
慌てて、師へと視線を向けて歩き出す。
そしてついに、私以外の、戦うために集められた子供達がいる控室に入った……その瞬間だった。
私は、凄まじい闘気を放つ…………龍の仮面を被った子供の姿を控室で見た。




