五十五服目 Play Back(1)
第二次世界大戦の後。
新天地を求め、多くの日本人が中南米に移住した。
それ以前にも中南米に移住した日本人はいたけれど、私の祖父母の場合は、戦後に中南米に移住した。
戦争に負けた日本には、希望がなくて。
それで日本政府の宣伝文句に乗っかって移住して…………。
でも、そんな中南米にも。
祖父母が求めていた希望はなかった。
確かに移住した人の中には、成功者もいる。
中南米の土地で、日本の作物の栽培に成功して、お金を貯めて、大地主になって幸せを掴んだ人達が。
でも、誰しもが成功するワケじゃない。
一方で日照りや洪水に苦戦し、餓死者がたくさん出たり、ジャングルの肉食獣に襲われたり、伝染病に罹ったり、さらには山賊に襲撃されたりと、悲惨な目に遭う人達も大勢いた。
それに、戦後に南米で起こっていた『勝ち組』と『負け組』の抗争。
敵国であった日本からの移住者に伝わっているべき情報が遮断されていたせいで起こってしまった悲劇のせいで、日本人は中南米では信頼を失っていて……肩身が狭い思いまでした。
私の祖父母は、そんな世界でも懸命に生きた。
だけど結局、奇跡的に成功した日本人の仲間入りを果たせず……私の家族は貧困層の仲間入りを果たした。
※
それから、年月は経って。
私は、十歳になる前に両親を病気で亡くした。
そしてそんな私は…………犯罪組織にとっては、格好のカモだった。
※
ゴミを漁っている時に、私は、とある犯罪組織に拉致された。
組織の名前は、分からない。もしかすると名称を付けていなかっただけかもしれないけれど……聖なる死神の像がアジトに置いてあった事からして、最近世間で問題になっている、聖なる死神を祀る組織の一つ、だという事は理解できた。
聖なる死神とは、メキシコで爆発的に流行している民間宗教で祀られた神だ。
あらゆる願い事を聞き入れ、叶えてくれると評判で、犯罪者を含めたいろんな人が信仰しているらしい。
ちなみにその神様は、死神と言われているだけあって、ドレスやケープを纏った骸骨のような見た目だ。
そして、その犯罪組織の主な収入源は薬物と内臓だった。
当然、私が拉致されたのは、そのどちらかのためだろう。
※
私は、麻薬のためにコキ使われる事になった。
組織に所属していた元医師の診断によって、栄養失調のせいか、私の内臓の状態が良くないらしいと判明し、幸か不幸か私の内臓は取り出されずに済んだ。
だから代わりに、薬物の売人として、組織のために働く事になったのである。
逃げたい、と正直何度も思った。
貧困層の子供の中には、犯罪組織に入って成り上がった子もいるらしいけど……だからと言って私までそんな人生を歩みたくない。死んだ両親は絶対に私にそんな人生を歩んでほしくないだろうし、麻薬なんてシロモノも嫌いだ。一度でも打てばもう引き返せない。人間として壊れてしまう。そんなモノを扱うなんて。売り捌くなんて。それにこういう犯罪組織は、部下を簡単に切り捨てると聞いた事がある。だから私も、いつか組織に――。
――でも、結局。
脱走はできず…………私は地獄を見た。
閉所に閉じ込められて、幻覚を引き起こす薬物を打たれて、変な言葉を散々聞かされ続けて、私が組織なしでは生きられないよう洗脳して、時には私のような子供に性的興奮を覚える構成員に組み敷かれて乱暴されて……。
もう、私は…………普通の生活はできなくなっていた。
※
でも、ある日。
私の人生は急展開を迎える事になる。
「ッ? お前、その体つき…………なかなか強いんじゃねぇか?」
元格闘家だという、一人の男性が組織に入った事をキッカケに。
脳内再生的な意味合いのタイトルです。




