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  四十五服目 怪氣学園S(21)


「ッ!?」


 千桜の手元の鈍い光の存在に気付くと同時に、カノアはすぐさま、正面から見て左へと(かわ)した。千桜の手にあった刃物が、カノアの背後にある壁に、ガチンッ、と激突する音がする。


 カノアは(かわ)すと同時に、そのままの勢いで後ろを振り返る。

 するとそこには、間違いなく。顔色が悪く、血走った目をして……そして刃物を持った親友がいた。


「…………ぁ、ノア……ゃ、ん……」


 そして、その親友は。

 壁に刃物をぶつけたせいなのか。それとも不完全なる煙草の煙を吸い続けた影響なのか。それとも……親友を殺す事を(ちゅう)(ちょ)しているのか。

 カタカタと震える手で。刃渡りからして、包丁と思われる刃物を持ち直し。それを親友であるハズのカノアへと、その血走った目、そして――。


「…………な、ンで……わた、しを……巻き込ん、だの……?」


 ――憎しみと共に、向け直した。


「……ッ…………チ、ハル……」


 変わり果てた親友から。

 ()()()()()()()()()()()()()()()向けられたその憎悪に、カノアは何も言い返す事ができなかった。


 それは、(まぎ)れもない事実だから。


 たとえ、敵の策略によって言わされている事だとしても。

 今まで彼女が、霊媒師として背負ってきた業である事に変わりはないのだから。


     ※


 己の利益のために活動する偽物ではない、()()()霊的な世界の秩序の番人。

 常人には見えない世界を、見たり感じる事ができる、本物の霊媒師であるカノアを始めとする者達には、心霊絡みの事件の発生場所の事をよく知る存在は、協力者として必要不可欠だった。


 なぜならば、その発生場所にいる人達にこそ、心霊絡みの事件発生の原因がある場合があるからだ。

 そして実際に、カノアが煙術師の師匠の(もと)から独立し、関わった事件の中には、現地の住民側に原因があったケースがいくつもあった。


 そしてそれらの事件は、彼女が現地で見つけた協力者の協力もあり、見事に解決する事ができていた。


 時には……()()()()()()()()()()()()()()


     ※


 千桜に。

 変わり果てた親友に問われ、カノアの脳裏で、今まで自分に協力してくれた者達の顔が、そして言葉がフラッシュバックする。


『俺は、この町が好きだ。町のみんなも。だから協力させてくれ』


『しょうがねぇな。お前だけじゃ不安だから……手伝ってやるよ』


『協力させて。私は……この〝場所〟の真実を知りたいんだ』


『君みたいな子に全てを任せるなんて、大人として、できないよ』


『お前のためじゃない。僕達は……僕達のために、お前に協力するんだ』


 様々な理由で。

 彼ら彼女らはカノアに協力してくれた。


 しかし、どのケースにおいても。

 彼ら彼女らが、無事で済んだ事は一度もなかった。


 心霊絡みの事件の犯人である、幽霊による被害だけではない。地元住民による口封じの被害を受けた協力者もいた。そしてその際、軽くても……彼ら彼女らは必ず病院送りになるほどの被害を受けた。最悪、殺される者もいた。


 しかしそれでも。

 カノアは、それらの事件の調査などを中断するワケにはいかなかった。

 被害を受けた協力者のためも、もちろんある。だがそれと同じくらい彼女には、生者と死者、そして()()()()()救いたいという気持ちがあったのだから。


 しかし、それと引き替えに。

 使命をまっとうするごとに。


 彼女の中では……今まで犠牲にしてきた、大切に思っていた協力者達への、巻き込んでしまった罪悪感と後悔の念が、少しずつ(ふく)らんでいた。


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― 新着の感想 ―
[一言] なんて辛い仕事なんだ……!(ブワッ)
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