四十二服目 怪氣学園S(18)
――…………そろそろかな?
どことも知れない空間の中で。
清雲学園を拠点に活動している……否。
正確には、していたその存在は思った。
――もう、この茶番はおしまい。
自分の今までの行動。
そして、かつて仲間として利用していた、この世界に居場所がない者達の行動を思い返し……うまく利用し尽くせた事に、満足して嗤いながら。
――相手の心を壊す実験は、必要最低限データ取れたし。
次にその存在は、自分の目の前にある部屋の片隅で蹲っている……先ほどは命令通りにちゃんと動いてくれた、顔色の悪い少女を見下ろした。
彼女の目の焦点は、合っていなかった。
全身が、時折、常温の空間であるにも拘わらず痙攣している。
そしてそんな少女だからこそ。
その存在は、自分にとって邪魔な存在を行動不能にできると……確信した。
「じゃあ、さっさと……まずはあの子を連れ込みますか♪」
そして、どことも知れない場所で、その存在は歌うように声を出す。
蹲っている少女の体が、一瞬、今までで一番痙攣した事に気付かずに。
※
不完全なる煙草の煙幕により、北校舎内はもう、方向だけでなく敵味方の位置関係も把握できる場ではなくなっていた。
不完全なる煙草の本来の効果もあるだろう。だがそれだけでなく、敵と戦う度に移動をし続けるせいも、少なからずあった。
しかしカノア達は、敵に味方との距離を離されないように注意をしながら、それでもなんとか連携し、的確に敵を撃破していく。
先ほどよりも、傷は増えた。
だがそれと反比例して、敵の数は確実に減ってきている。
このままいけば確実に敵を一掃できる。
カノア達は、戦っていく中でそう確信した。
そして、戦いが終われば。
気絶している敵を無理やり起こし、千桜と美彩の居場所を、どんな手段を使ってでも絶対に吐かせる。
そして、居場所を聞き出すなりすぐに二人を助け出す。
そこまでの結末を、頭の片隅で思い描きながら……彼女達は戦い続ける。
「ッ!? ここは……」
そして敵の数が、残り二十人にまで減ったその時。
壁際にまで、敵の一人を追い詰めた時、カノアは気付いた。
敵の背後に、紫煙による煙幕の先に……大きな鏡があるのを。
――まさか、自分達は中通路にまで移動していたのか。
大鏡の存在から、すぐにカノアは現在地を把握した。
まだ北校舎内にいたと思っていた彼女は、一瞬驚いたものの、しかし、気にしている時間がないので、敵の無力化を優先しようと動き――。
――その鏡より突き出してきた両腕に、瞬時に反応する事ができなかった。
「……は?」
予想を超えたまさかの事態が起き、カノアの思考が一瞬止まる。
そして、突き出してきた両腕が。
今まさに、敵を無力化するべく……鏡の方へと近付いてきたカノアを見逃すハズがなかった。
一瞬の、出来事だった。
周囲の様子を把握しにくい。
敵が使っている紫煙の煙幕の中で。
カノアは。
誰にも知られずに。
鏡の中へと 引 き ズ り 込 マ れ タ 。




