三十五服目 怪氣学園S(11)
「そういや霧彦、あながち間違ってないとか言ってたけど……どういう事だ?」
千桜の捜索を続ける最中、璃奈は隣を歩く霧彦に今さらながら訊ねた。
教師の幽霊に襲撃された時に、彼が言っていた事だ。襲撃の最中であったので、今の今まで訊くタイミングを逃していたのである。
すると霧彦は「まず初めに」と前置きしてから、璃奈の疑問に答えた。
「最初の事件。俺が、クロードくんの喫煙を目撃したあの事件にて、被害者の子に取り憑いたのはこの学校に怨みを持つ幽霊……だっただろ?」
「ああ。そうだな」
「そして第二の事件。クロードくんが突き飛ばされた事件。俺は直接見てないから分からないが……その時の幽霊は、廊下を走っていたんだろう?」
「確かにそうだけど……?」
「突飛な考えかもしれないが……その子は……いや、この話は後にしよう」
「なんだよ。気になるな。さっさと話せよ」
幼馴染の思わせぶりな話し方に、璃奈はやきもきした。
「次に体育館倉庫の幽霊」
しかし霧彦は、構わず話を進める。
「あの幽霊は校内で強姦被害に遭った子だった。それにさっきの教師の幽霊……他にもトイレで遭ったずぶ濡れの幽霊に、何かを捜して移動し続ける幽霊。死んだ場所が全員、もしもこの清雲高校であるなら……俺にはこの学校の問題に関わる幽霊達に見えてしょうがないんだ」
「…………ていう事は」
そこまで言われると、さすがの璃奈も彼の言いたい事を察した。
「最初のは原因が分からんけど、二つ目のは……パシリ、だってのか?」
「かもしれん」
次の教室のドアを少しずつ開けながら、霧彦は言った。ほぼ同時にカノアが教室内に浄化の紫煙を吹き付ける。安全がとりあえず保障されたところで七人は教室内に捜索のため入り、それから改めて霧彦は話を続けた。
「体育館倉庫に出現したのは強姦被害者。ずぶ濡れの幽霊は、個室トイレに入っている時に水をかけられた幽霊。何かを捜す幽霊は物を隠された幽霊。そして教師の幽霊は……モンスターペアレントに精神的に追い詰められた教師の可能性がある。幽霊の言っていた事からの推測だから、本当かどうかは分からんが、さっき言ったように全ての幽霊が死んだのがこの高校であるなら……俺達が校内で会った幽霊達は、全員がこの学校の抱える問題の被害者だ」
「…………うわぁ。という事は、この高校はそんだけ闇を抱えているって事かよ」
璃奈はドン引きした。
「というかなんで今までそれがニュースになっていないんだ? ここまで問題多いとニュースに出そうじゃねえか?」
「巧妙に隠されていたのかもしれない」
霧彦は顔をしかめながら答えた。
「当時のイジメの当事者や、イジメを知った教師陣によって」
「うげぇ。闇が濃いな。他の学校に通った方がよかったかな。無理してでも」
「もしかすると他の学校にもこういった事があるかもしれないぞ。表に出ていないだけで」
「八方塞がりかよ。この国ヤベェんじゃねぇか?」
「というか完璧な国なんて、作れるとは思えないけどね」
するとその時、陽が口を挟んだ。
「国民が増えればそれだけ多くの思想が交錯する。そしてその度に争いが起こる。そしてそんな連中の争いを止めたきゃ、全員の願いが叶う環境を作らなきゃだけど……全員の願いを同時に叶える環境なんて出来るワケがない。中には相反する願いを持つヤツもいるからね」
「「「「「……………………えっ?」」」」」
「……陽? そんな事を言うようなキャラだったっけ?」
まさかの陽の深い意見を聞き、思わず呆然とした一同の意見を美彩が代弁した。
「ウチは大所帯だからね」
陽は肩を竦めながら答えた。
「いろんな意見が常に飛び交うから、自然とそういう考えも持つさ」
「陽の家、行った事ないけど……凄そうだな」
「私、ちょっと気になるかも! 一度行ってみていい?」
「いいけど、驚かないでよ?」
不完全なる煙草の売人との戦いの最中だというのに、いつも通りな女子三人組の会話が始まった。なんとも緊張感に欠ける場面ではあるが、緊張しっぱなしなのもよくないだろうという事で……誰も咎める事はしなかった。




